「グローバル時代の日本のものづくり」...工業デザイナー・奥山清行さんインタビューから
2013/5/5の日本経済新聞の記事「日曜に考える 日本の個性 世界にどう売り込む」で、工業デザイナーの奥山清行さんのインタビューが掲載されています。
奥山さんはイタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした方です。
日本のものづくりに今求められていることを、ズバッと語っておられます。
---(以下、引用)---
ーものづくりで世界に勝つには何が必要でしょうか。
「想像力とビジョンだ。(中略)レストランでシェフから『何を作りましょうか』と聞かれても客は魅力を感じない。自分が知らない世界を見たいと思っているからだ」
「....目の前にいない未来の消費者が何を求めるようになるのか。それをいち早くつかんだものが、市場の勝者になれる」
---(以上、引用)----
これは「100円のコーラを1000円で売る方法」でも書いた「顧客の言いなりになってはいけない」ということですね。
たとえば1年間に国内で新販売される清涼飲料水は二千種類もあります。これらはすべて商品開発チームが慎重に企画を立てて開発した商品です。
しかし消費者に「この1年間で新発売された清涼飲料水は何?」と聞いても、ほとんど思い出せないのではないでしょうか?
現代は非常に多くの業界で競争が激化していて、顧客から見ると似たような商品が沢山あるのですよね。
このような状況で顧客の言いなりになっているかぎり、顧客の期待値を超えることはできません。
とは言え、顧客の一歩先に行くと早すぎます。半歩先で仕掛けて、実際に商品を「欲しい」と思ったタイミングで提供することが求められているのですね。
一方で市場がグローバルに広がっています。奥山さんはこのことについても語っておられます。
---(以下、引用)---
「僕が日本のものづくり再生の武器に使っているのは、外国の権威を利用した『黒船効果』。国産スポーツ車はジュネーブ国際自動車ショーに、家具や工芸品はミラノの国際家具見本市に出展している。認めてもらえば世界市場と直結して仕事ができる。黒船効果は中国など新興国に売り込むのにも極めて有効だ」
---(以上、引用)----
自分で個別に売り込むのではなく、皆が集まっている場所に出向いていくということです。グローバルで勝負する機会は意外とあるのですね。
米国ではなくジュネーブやミラノといったヨーロッパの都市が出てきたのは結構意外でした。ヨーロッパで活躍されてきた奥山さんならではです。やはり文化面では相変わらずヨーロッパが世界をリードしているということなのでしょう。
---(以下、引用)---
「想像力は日本人の得意分野。相手の心情を推し量る能力は世界でもトップ級だ。....自己中心的でない客目線のものづくりが求められている。若者に広がる内向き志向は言語道断。海外に出て自分を客観視する経験を積まなければ、日本のものづくりに未来はない」
---(以上、引用)----
今や、グローバル化は「すべきか、どうか」という時期は過ぎ去って、「どのようにするか」という時代です。
グローバル化を意識するかどうかは、企業の問題であると同時に、個人の問題なのかもしれません。