ITmediaエンタープライズで、「バリュープロポジション戦略 50の作法」連載開始。第1回目は「顧客の立場、ビジネスの立場」
ITmediaエンタープライズで、「バリュープロポジション戦略 50の作法」の連載が始まりました。
このような機会をくださったITmedia様には、厚く感謝申上げます。
第1回目は、本書の第1章より、「顧客の立場、ビジネスの立場」です。
本記事に掲載した文章は、実は本書のオリジナルから変更しています。
例えば、行間の扱いです。
私の文章は、文章毎に改行をすることが多いのです。行間を空けることで、スピーチで言うところの「間」をこめたいためです。
例えば、音楽では、休符は単なる「音の休み」ではなく、休符そのものが音となって意味が込められている曲を多く見かけます。
聴く人がスピーチの「間」や音楽の休符に意味を感じるのと同様、読む人が、行間に意味を感じ取って欲しい、と願っています。
一方で編集の方から、「ネット記事の場合、改行を多用することで読みにくくなる」とのご指摘がありました。
そこで今回は文章を繋げました。
また私が書く文章は、文章として完結しない表現が多いのですが、これは「記事としては不完全」ということで、こちらも修正しました。
上記2点の違いは、例えば下記をご覧いただくとお分かりになると思います。
■オリジナル
顧客である私たちは、企業に対して「分かっていないなぁ」と思いがちです。
商品を見せられても、「何がいいの?どこがいいの?みな同じでしょ」
さらに勧められても、「欲しいものは、特にないし」
一方で企業にいる私たちは、「お客さんは、きっと分かる」と思いがちです。
企画段階で、「世に出せば、きっと分かる」
販売する段階で、「使えば、きっと分かる」
苦情を受けて、「使い込めば、きっと分かる」
売れずに販売中止になり、「実は分かっていないと、そのうちきっと分かる」
■今回の記事
顧客としての私たちは、企業に対して「顧客心理を分かっていないなぁ」と思いがちです。商品を見ても「何が良いの? どこが良いの? みな同じでしょ」と考え、では何が欲しいのかと聞かれても「欲しいものは特にない」と思うことが多いのではないでしょうか。
一方、同じ人間が企業で商品やサービスを提供する立場になると、「お客さんは、きっと分かってくれる」と思いがちです。
企画段階では「世に出せば、きっと分かる」、販売する段階では「使ってもらえれば、きっと分かる」、苦情を受ければ「使い込めば、きっと分かるのに」、売れずに販売中止になると「実は分かっていない。そのうちきっと分かるはず」、と考えがちです。
オリジナルでは、ビジュアルにロジック構造が分かるような表現も意図していたのですが、その独特の調子はなくなっています。
しかし、文章自体は、編集のプロの方の手を経ていることもあって、記事化した文章の方が、短く、かつ読みやすくなっていると思います。
私が「こうしたい」と思っているのはあくまで仮説ですし、最終的には読んで下さる方に伝わらなければ意味がありません。
編集のプロの方は、読者代表でもありますので、その知見とご洞察・ご経験は是非尊重したいと思います。
ご参考までに、以下にオリジナル文章を掲載します。
本記事と対比させながら読むと、面白いかもしれませんね。
オリジナルの文章
第1章 顧客の立場、ビジネスの立場
私たちビジネスパーソンは、同時に顧客でもある。だから顧客の立場を理解するのは、実は難しくない。それを理解するカギが、バリュープロポジション
顧客である私たちは、企業に対して「分かっていないなぁ」と思いがちです。
商品を見せられても、「何がいいの?どこがいいの?みな同じでしょ」
さらに勧められても、「欲しいものは、特にないし」
一方で企業にいる私たちは、「お客さんは、きっと分かる」と思いがちです。
企画段階で、「世に出せば、きっと分かる」
販売する段階で、「使えば、きっと分かる」
苦情を受けて、「使い込めば、きっと分かる」
売れずに販売中止になり、「実は分かっていないと、そのうちきっと分かる」
さて、私たちが商品を買う時は、次の2つを考えています。
商品を必要とする理由
ほかの商品ではなく、その商品を選んだ決め手
つまり、
「その商品だけが持っていて、ほかにはない、私のニーズに応える価値」
それが買った理由です。これを企業から見ると、こうなります。
「自社だけが持っていて、競合にはない、顧客のニーズに応える価値」
これがバリュープロポジションです。
バリューは価値。プロポジションは訴求。つまり、「価値の訴求」という意味です。
私たちは、商品を買う時、必ず無意識にその商品のバリュープロポジションを考えているのです。
しかし私たちは、企業側にいるとこのことを忘れがちです。だからこそ、意識的にバリュープロポジションを考えることが必要なのです。
日本では、1年間で新発売される清涼飲料水は、2000種類以上。
どれも、精鋭のマーケティング担当者が、徹底的に議論を重ねてバリュープロポジションを定義し、世の中に出した商品ばかり。
それでも、生き残るのはごく少数。
バリュープロポジションを考えない場合の結果は、明らかです。