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改めて読む、津本陽の田中角栄

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今、津本陽「異形の将軍―田中角栄の生涯」を読んでいます。

少年の頃の話から始まり、今、ちょうど下巻に入って山一證券事件の頃の話になっています。私はロッキード事件被告人としての田中角栄の印象が非常に強いのですが、その功罪は別として、改めて凄い人物だったことを再認識させられます。

この作品を書いた津本陽さんは、私が好きな作家の一人です。

織田信長の一生を描いた「下天は夢か」、その後を引き継いだ豊臣秀吉の様子を描いた「夢のまた夢」も、素晴らしい作品だったと思います。

「異形の将軍」上巻p.298に、以下のような文章があります。

「筆者は、角栄の功罪を問おうとしてこの小説を書いているのではない。日本の発展にきわめて重要な役割をうけもった、元総理大臣の人間性について、興味を持っている」

確かに、津本陽さんの文章は、事実を淡々と積み重ねていくことで、その人の人間性に迫る骨太な作品が多いように思います。

器で例えると、鮮やかな彩色をほどこした有田焼ではなく、ゴツゴツしていて土や岩そのものが持つ素材の質感を活かしている備前焼のようなスタイルです。

ランダムに1ページだけ取り上げても様々な地名、人物、日時等の事実データで埋められている津本陽さんの作品は、膨大な事実検証を行った産物なのでしょうね。

むしろ、小説というよりも、小説の名前を借りたドキュメンタリーと言った方がよいのかもしれません。

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