長時間露光環境における、銀塩フィルムとデジカメの描写性能の違い
この年末、久しぶりに20年来のテーマである東京湾岸の写真を撮影しています。
1980年代後半以来、このテーマは銀塩フィルムで撮影していましたが、最近になってデジカメに変更しました。
夜中に撮影することが多いのですが、銀塩フィルムと比べて、デジカメの場合は相反則不軌という現象が起きないのが一番大きな理由です。
相反則不軌というのは、1万分の1秒とか数十秒という通常では使わないシャッター速度で撮影した場合に発生するもので、フィルムの感度が下がり、かつカラーバランスも崩れてしまう現象です。
ご存知の通り、写真フィルムは、フィルム上にある感光材料の中のハロゲン化銀が光に当たって反応することで画像を固定します。数十秒程度の露光時間になるとこの反応が1/10位になります。(反応が線形でなくなる、ということです)
このため、数十秒の露光が必要な場合でも、実際には5分とか15分の露光が必要になります。
さらに、カラーフィルムの場合は、3原色毎に感光材料が反応するようになっているのですが、3原色毎にこの反応の鈍さが異なるので、カラーバランスが崩れます。例えば、全体がマゼンタ色になったり、緑っぽくなる、というような感じになってしまいます。
そこで、私が銀塩フィルムを使っていた頃は、夜中の写真は1枚15分程度の時間を使って撮影していました。段階露光をしたりすると、1時間で3-4枚しか撮れません。しかも、カラーバランスが崩れ、かつ、暗い箇所は真っ黒に描写されてしまいます。ただ、このカラーバランスの崩れと暗い箇所が省略されるところに、微妙な味があったりするのですが。
デジカメになって、この相反則不軌が通常使用する範囲では生じなくなりました。従って、夜中の撮影が非常に楽になり、作品作りに集中できるようになります。
さて、どの程度画質が違うのか、サンプルを作ってみました。題材はお台場にあるフジテレビの社屋、使用レンズは同一です。
左が銀塩フィルムによるもの、右がデジカメによるものです。クリックすると拡大表示します。左も結構味がありますが、やはり比較するとくすんで見えてしまいますね。
画面の右上にある箇所を拡大したのがこちらです。左が銀塩フィルム、右がデジカメです。クリックして拡大表示するとわかりますが、結構、差は大きいです。
ただし、数十秒という長時間露光は銀塩フィルムの想定使用外ですので、この比較は必ずしも通常使用の性能差を比較しているものではありません。
また、使用したデジカメは4年前に発売したものとは言え、プロフェッショナル用の1110万画素の機種なので、中判カメラ並の性能を持っていることを申し添えます。