無理なく、自分一人で複数人分のアイディアを出す方法
ITmediaのBiz.IDで、GTDについて書かれています。知らず知らず実行していることがあったりして、「膝ポン」な内容が多いですね。ちなみに「GTDって何?」という方はこちら。
私も「いかに仕事の品質を高めるか」と「いかに仕事を短時間で片付けるか」を常に意識して仕事を行っていますが、私が行っている方法の一つが「複数の自分でブレインストーミングをする」ことです。
とは言っても、自分の中に別人格を構築し頭の中で討論する、という非常に難しいことを行っているのではありません。
「時間差」と「忘却」(unlearning)を活用したものです。
例えば、2週間後に大切な1時間程度のプレゼンがあるとします。このような場合、プレゼン前日に徹夜して頑張ってもよい仕事にはなりません。また、時間をかければよいという訳でもありません。
短い時間で内容のあるモノを作るために、私は下記の方法で準備を進めます。
(1).プレゼン14日前
まず最初に、プレゼンの目的と自分のキーメッセージを洗い出し、おおまかな章立てとその内容をテキストで書き出します。併せて、事前調査が必要な内容も洗い出しておきます。
(2).プレゼン12日前
上記から1-2日間置いてから再度章立てを見直し、気が付いた内容をどんどん追加します。ネタのストックを貯めることが目的なので、既に書いているものはこの時点では変更・削除しません。
(3).プレゼン7日前
上記から3-4日間はこのプレゼンのことは忘れ、別の仕事をします。
1週間前になったら、再度上記メモを見直し、新しい観点で章立てを再構成した上でパワーポイントの資料を作り始めます。出来る限り手持ちの資料を使うことを考え、新規作成が必要なチャートは「そこで言いたいこと」をテキストでメモ書きするに留めます。全体を作った時点で、最初から見直してストーリーが通っているかを確認します。場合によっては、ストーリーに合わせてチャートのタイトルを修正します。
(4).プレゼン4日前
上記から数日間、このプレゼンのことは忘れて別の仕事をします。
4日前になったら、再度ストーリー全体を通して見直し修正します。この段階ではストーリー全体の流れの中で余分なモノを切り捨てます。場合によっては、当初新規作成を考えていたチャートが不要になることもあり、無駄に作成する時間が節約できます。最終的に新規作成が必要となったチャートを作ります。
(5).プレゼン3日前
上記から1日置いて、全体を通して見直し、修正します。これをドラフト版とします。必要な関係者に事前に送付し、意見を反映させます。
(6).プレゼン前日
最終チェックを行います。基本的に大きな変更は行いません。
内容により、かける時間や方法は異なりますが、おおまかにこんな感じです。
上記方法では、「集中思考」⇒「忘却(unlearning)」⇒「集中思考」⇒「忘却(unlearning)」⇒「集中思考」を繰り返しています。"unlearning"、つまり「先入観を捨てる」のがポイントで、このおかげで自分一人でも時間をかけずに無理なく一つの課題を多面的に深堀することができます。
冒頭で「複数の自分でブレインストーミングをする」、ポイントは「時間差」と「忘却」である、と書きましたが、まさにこれを狙ったものです。
「三人寄れば文殊の知恵」と言われているように、複数人が集まれば素晴らしい知恵が出てきます。しかし、プロフェッショナルはあくまで自分が頼りであり、安易に他人を頼るべきではありません。その場合、自分自身が他人の視点になればよいのです。
一方で、一人だけで一生懸命考えても、その時点では複数人が集まった知恵にはかないません。
そこで、時間をかけて準備することが、意味を持ってきます。
例えば、仕事でもプライベートでも結構ですが、同じ問題を考え続けていると、昨日と今日とでは全く違う考え方をしていることがよくあります。このように出てくる考えは、1週間前の考えとも違っています。
これは、(a)ある時点で考えたことを忘れて新しい考えが生まれたためと、(b)思考を深めていく中で時間とともに考えが整理されていっているためです。
試しに、現在あなたが抱えている問題について、今日から10日間、毎日アイディアをメモに書き留めてみて下さい。10日後に全体を見直した場合、恐らく「これが同じ人間の発想なのか!?」と思う程、多彩な考えが書かれている筈です。しかも、往々にして後のアイディアの方が洗練され、かつ具体的なモノになっています。
これを全て記録し可視化することで、複数人とブレイン・ストーミングをするのと同じ効果が得られます。さらに、他人とブレイン・ストーミングするのと異なり、同一人間が考えているので、暗黙知が完全に共有されています。
ポイントは、なるべく早めに準備に取り掛かり、余裕を持って仕上げること、及び「自分の中にいる複数人の知恵を集めるのだ」ということを意識して進めることです。
また、各段階ではあまり時間をかけ過ぎないことが必要です。例えば、上記(1)(2)(5)にかける時間は5-10分程度が適切です。多面的な見方を取り入れるためには、一つの段階に時間をかけるよりも、短くてもできるだけ多くの回数をこなす方が効果的なようです。
自分一人では気が付かない部分もありますので、ある程度完成版がまとまった段階で、他人に見てもらって意見を聞き、取り入れるのも効果的です。
仕事以外に色々とやることがあるために、必要に迫られて考えた方法ですが、ご参考になれば幸いです。