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音の商標登録制度とHello Windowsについて

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昨日のエントリーについたはてブに「Hello Windowsができなくなる」というようなコメントがついたので、「Hello Windowsってなんぞ」と調べてみたらこれですね(ニコ動に登録してない人でも聞けるようにYouTubeの動画をリンクしました)。これはすばらしい。ニコ動にはすでに「PC効果音シリーズ」というジャンルもあるようです。

さて、このような作品が法律的にOKかどうかというお話ですが、これは音が商標として登録できるようになるかどうかという話とは直接関係ありません。商標権とは企業や団体が商品やサービスの標識として特定の図形や文字を独占的に使う権利です。ゆえに、「商品やサービスの標識として」使わない場合には、商標権の効力は及びません。

これはよく考えてみれば当たり前の話です。たとえば、「ビッグマック」はマクドナルド社の登録商標ですが、日常生活で「ビッグマック」という言葉を使うのにマクドナルド社の許可を得る必要はありません。しかし、ハンバーガー屋が「ビックリマック」という商品を売り出せばおそらくはマクドナルド社から商標権に基づいた警告書が送られてくるでしょう。

追記: 山口百恵の「プレイバックパート2」を歌うのにポルシェ社に商標権使用の許諾を得る必要はない、と言った方がわかりやすかったかもしれません(たとえがちょっと古いですが(爆))。

「ホリエモン」だとか「阪神優勝」だとか「ハンカチ王子」だとか時の言葉が商標登録出願されると必ずこの手の話が出てくるのですが、しつこくまた書いてみました。

なお、著作権の話はまた別です(音が商標登録できるかどうか関係なしに著作権については考慮する必要があります)。

ここで、またWindowsの起動音は著作物かという議論になってしまいます。Win95の起動音はブライアンイーノ、XPの起動音はロバートフリップの「作曲」だったと思いますが、個人的には著作物性があると言ってもよいのではないかと思います。ただ、単なるビープ音には著作物性がないのは明らかであり、境目はどこなんだといわれると困ってしまいますが。

まあいずれにせよマイクロソフトがWindowsの効果音を使った音楽作品に対して著作権に基づく権利を行使することはないでしょうし、また、行使すべきでもないと思います。

ところで、Hello Windowsのような作品を聴いた時の反応により人は2つのタイプに分けられると思います。「単なる既存の音の切り貼り」と思う人と「すばらしい創造性」と思う人です(もちろん私は後者)。個人的には前者のタイプの人には将来の著作権制度を作る役割を担ってほしくない気がします。

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