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サウンドロゴが商標登録できるようになりそうな件

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先日、ピクサーの最新作WALL-Eを観に行ってきました(2回目)。さすがはピクサーで、CGもストーリーもキャラ作りも素晴らしい作品なので是非ごらんになることをお勧めします。

ネタバレにはならないと思うので書いてしまうと映画中でマックの起動音が効果的に使われている部分があります。ピクサーの大株主・役員であるスティーブジョブズつながりでしょう。

ただの音ではありますが、多くの人が「あーこれはマックの音だな(他のパソコンの音ではないな)」とわかるという点で、マックの起動音には十分な自他商品識別力があると言えます。自他商品識別力があるということは、商標として保護すべきという考えが出てきてもおかしくありません。ということで既に米国を含む何カ国では音を商標として保護する制度が既にあります(サウンドマーク、サウンド・トレードマーク)。

USPTO(米国特許商標長)の子供向けページで、米国で登録された(あるいは審査中の)サウンドマークが実際に聞けるようになっています。日本人にとっても親しみ深いのはインテルのCMで使われているサウンドロゴでしょう。なお、マックの起動音についてはサウンドマークとしては登録されていないようです。また、サウンドマークの話でよく引き合いに出されるハーレーダビッドソンのエンジン音ですが、競合他社からの反対に合い結局は登録されなかったようです(ソース(Wikipedia))。エンジン音というだけは自他商品識別力が足りないということでしょう(一部のバイクマニアであれば識別できるのかもしれませんが)。

前置きが長くなりましたが、日本でもサウンドマークや動画による商標を保護しようという動きが具体化しつつあるようです(ソース)。この話は以前からあったと思うのですがようやく方針が固まったということでしょう。先に書いたように、音で自他商品識別力を持つものはいっぱいあります(特にCMで使用されるサウンドロゴ)ので、商標として保護するのも当然と言えるでしょう。ウェブ上で音を確認するのも容易になってますし。

さて、この話が以前書いたサウンドロゴの著作物としての保護とどう関連するかという件ですが、著作権はクリエイターによる創作を保護するものであり、商標権は商品やサービスを提供する会社の業務上の信用を保護するものなので目的が全然違います。商標を作るのにも創造性が必要とされるケースも多いとは思いますが、商標法は商標を創作物とはとらえていません(強いて言うと選択物ととらえています)。

たとえば、ブログで書いた住友生命のサウンドロゴの著作物性が問題になった時にサウンドマーク制度があったとしたらどうなっていたかを考えてみましょう。仮にこのサウンドマークが登録商標となっていても、生方氏(サウンドマークの作成者)の権利には直接関係ありません。住友生命が、まぎらわしいサウンドロゴをCM等で使っている他社に対して差し止め等を請求できるというだけの話です。

とは言え、サウンドロゴの商標登録が一般化すれば、サウンドロゴの財産的価値が高まることが予測されますので、魅力的なサウンドロゴを作れるクリエイターの人が企業との契約において有利になり、間接的に利益を得られることは十分に考えられます。

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