日本の著作権制度の融通の利かなさ加減について
だいぶ前の話ではありますが、国税庁が実施予定の差し押さえ品のネット・オークションに対して、文化庁が著作権法違反ではと指摘したというニュースがありました(参照記事)。ネット・オークションを行なうためにWebサイトに作品の画像を乗せるのが何で著作権法違反になるのかと思い人も多いかもしれませんが、確かに、現行の著作権法をストレートに解釈すれば、著作権者の許諾がなければ違法となってしまいます(もちろん、著作権切れの作品は除きます)。
文化庁の指摘に対して、国税庁側が「権利者の不利益ではない」と応えているのも興味深く感じました。これは、「フェアユース(公正利用)」ぽい抗弁です。以前書いたように、日本の著作権制度では基本的にフェアユースの考え方はありません。「誰も損はしてない」と言っても、民法上の損害賠償を免れる意味はあるかもしれませんが、著作権法上の差止請求を免れることは原則的にできません。とは言え、「誰も損していない(というよりも公共の利益になっている)のだから著作権侵害になるのはおかしいじゃないか」というのは、通常の人であれば常識的に考えることですから、国税庁側がこう答えるのも無理はありません。
米国であれば、この手の問題はすべて「フェアユース」か否かにより判断されることになるでしょうし、ネットオークションのために作品の写真をWebに掲載することは「フェアユース」である(ゆえに著作権侵害ではない)と判断される可能性が高いと思います。
ついでに言っておくと、この前ちょっと書いたlala.comのようなサービスに対して、レコード会社が権利侵害であると物言いを付けたとするならば、もちろん、DMCAに準拠しているかのような判断は行なわれるでしょうが、最終的には「フェアユース」かどうかで決着されることになるでしょう。自分が持ってるCDをどこで聴こうがユーザーの自由であり、レコード会社の利益は害していない、ゆえに公正な利用であると裁判所が判断すれば著作権侵害ではないということになります。日本のように、「この行為の主体はxxxだから第30条に該当せず違法」という杓子定規な解釈を行なうやり方よりは現状に合致していると思います(杓子定規な解釈を行なわざるを得ない日本の制度が問題だと言っているのであり、解釈を行なった判事を非難しているわけではありません、念のため)。
池田信夫先生が言われた「日本の著作権制度は世界一厳重」はちょっと言い過ぎかと思いますが、少なくとも「日本の著作権制度は米国と比較してはるかに融通が利かない」とは言ってもよいかもしれません。