下請けからの脱却
そろそろ年度末ということで、当社でも各事業ごとに今期の業績がまとまりつつあるところです。私が直接関与しているIT事業部ではこの下期は大幅なプラスの業績となりそうです。
IT事業部では「ソフトウェア開発」を中心に仕事をしてきました。私が24年前に入社し、当初はCADシステムの開発販売を行っていて、入社3年で事業部を立ち上げ、CADシステムの開発販売事業を行う事業部としたのですが、ろくな結果を出せず、その後3年くらいで、派遣として客先に散らばったり、あるいは細々と受託開発らしきことをしたりしていました。あるお客さんのCAD特注品開発だけはそれなりの稼ぎでしたが。
あるとき、たまたま大手さんの孫請けとして、「まともな」受託開発に関与するチャンスをいただき、受託開発業界のことはさっぱり分からない素人状態でしたが、プログラミングスキルだけは大手さんもビックリするほどのものがあり、それ以降、大手さんの孫請け、あるいは、CADの特注品開発などで、プラスの業績を続けてきました。当初はCAD特注品のボリュームがとても大きかったのですが、私は「CADシステムも完成したらボリュームはなくなる」と、受託開発のお客さんの幅を広げることに注力していました。
その後しばらく、受託開発で余裕ある業績を続けていましたが、「受託開発がこのまま儲かり続けるとは思えない」と考えるようになりました。オフショアや、インターネットの普及、さらに不景気と、様々な背景がありますが、とにかくこのままだとまずいと考え、「受け身」ではなく「提案型」つまり、「自分たちが主体となる仕事の仕方にしなければ」と強く考えるようになりました。
当時から、私自身は技術的に面白いものを作ると、製品として自社のホームページに掲載してきました。小さな無名会社ですから、どうせ製品自体の問い合わせはこないだろう、と思っていましたが、こんな開発をできるという、技術アピールとして考えていました。
その効果が直接出始めたのは、実は採用活動でした。当社のホームページを見たマニアックな学生さんから、「そんな製品を作れるくらいなら一緒にやりたい」とチャレンジがちらほらと出始めました。その一人がオルタナブロガーの種田君ですね。
優秀でやる気があるメンバーが集まってきたので、本格的に製品開発販売事業を立ち上げました。当初は「製品などという、儲かるかどうかも分からないものに時間をかけるなんて・・・」という反対意見も多かったのですが、熱い思いを持つメンバー達は「受託開発で稼ぎながら、自分の時間を削って製品開発」という感じで取り組んでくれていました。
それぞれの製品ごとに、売れはじめたきっかけは異なるのですが、「人脈で有名企業へのOEMがきっかけ」「価格の安さから入札案件で注目された」「他にない製品だった」という感じです。開発すること自体よりも、製品は売れはじめるまでが大変で、売れはじめれば次にサポートをはじめとする販売体制も大変、と、やってみなければ分からない苦労がたくさんありましたが、なによりメンバー達が、「受託は裏方だけれど、製品開発販売は自分たちが主役になれる」ということで、よく盛り上げてくれました。
さらに、当社の場合はもともとが受託開発中心でしたので、製品をきっかけに特注品の相談も増えることになりました。もともと私がやっていたように、「製品は技術力の看板」という役割も、売れるようになればますます効果的になるわけです。
それでも、「提案型への方向転換」からまともな結果をたたき出せるまでは、3年くらいはかかっています。何事もそんなに簡単にうまくいくものではありません。ようやく胸を張って「提案型ビジネスになった」と言える状態になったと思える状態でしょう。
今期の業績の内訳比率は、荒利ベースで、
受託開発:製品受託:製品販売=4:6:5
※受託開発:下請的な受託開発
※製品受託:製品をきっかけに特注品の開発を依頼いただいたパターン
という感じで、製品の貢献度はとても大きなものになっています。製品をきっかけとした受託の割合もかなりのものです。
さらに、実は受託開発自体も、大手の下請け的なものから、エンドユーザ直接、あるいは、設計工程から一緒にやるような、より付加価値の高いものに変化させてきています。
従来通りの下請け受託開発は、今や単価がどんどん下がり、誰でもできるような開発仕事で1人月90万円を確保できる受託開発など、ほとんどなくなり、持ち帰りだろうが、常駐だろうが、どうやってまともな給料を払うのか?と頭を抱えるような単価になってしまっています。
製品開発販売の良いところは、「人が動いた時間に関係なく稼げる」「製品が自社のアピールとなる」「メンバーのモチベーションが高くなりやすい」「一度作ったものが無駄にならない」「ノウハウが蓄積される」など、数多くあります。その反面、「売れるかどうか分からない」「かけた工数の回収は約束されない」「ニーズの変化は早い」「競合製品」など、リスクも多くあります。「人を売るのか?技術(アイディア)を売るのか?」という判断の分かれ目です。
幸いなことにリスクは減らすことができます。なによりも大切なのは、「相談できる社外の方」の存在ではないかと私は感じています。客観的な視線で評価していただけたり、ビジネス面でのアドバイスをいただけたり、あるいは協業させていただけたり、詳しい方を紹介いただけたりと、自分一人ではどうしようもないことを解決するきっかけをもらえます。もちろん、バランスが大切で、してもらうだけでは良い関係にはなれません。
さて、いろいろ書きましたが、ここまで育てていただいた、お客さん、販売店さん、知り合いの皆さんに感謝したいということと、なにより、自分たちの力を信じて頑張ってきたメンバー達に「ありがとう」と言いたいのでした。とはいえ、これがまた次のステージへの出発点です。自分たちの道を信じて、さらに社会の役に立てるような事業を目指していきたいと考えています!