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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

コラボレーションツールの導入効果が具体的に数値化され、コラボレーションに取り組んだ企業が勝ち組になるというレポート

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 調査会社フロスト&サリバンから非常に興味深いホワイトペーパーが出ている。「ミーティング・アラウンド・ザ・ワールド」というベライゾン並びにシスコとの共同調査の結果を纏めたもので30ページもある長い内容だが、情報共有やナレッジマネジメントに携わっている人には必読だ。PDFファイルはここから会員になればダウンロードできるが、以下にサマリー的に内容を紹介する。

 このホワイトペーパーの中で、最も注目すべきはコラボレーションに優れた企業はパフォーマンスが向上するという結論を数字付きで示したことだ。従来コラボレーションとビジネスパフォーマンスの向上の関係は不明確で判りにくく、特に情報系のシステム投資をする際にその効果を説明するのは困難だと言われてきた。

 この調査ではこれをます、企業でよく使われる(導入率33%以上)のコラボレーションツール11種類に着目して、11種類のツールのうち3つ(「音声/ウェブ/テレビ会議」「ユニファイドメッセージング、IM」「モバイルでのテレフォニー機能」)しか導入していない企業、8つ導入した企業、11個全てを導入済の企業に分け、それぞれに企業活動において重要なビジネスシーンでのパフォーマンスを競合他社と比べた感想を纏めている。(詳しくはホワイトペーパーの4ページ参照)

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  結果は、3つしか導入していない企業の回答値が52だったのに対して8つを導入した企業のそれは74、全てを導入済の企業は93と実に8割近くもパフォーマンスに優れるという回答となり、コラボレーションツールの導入がパフォーマンスに影響しているとの結論を得た。

 もうひとつこの調査では、コラボレーション利益率(ROC)というコラボレーションが企業の重要な部門の活動にどのような影響を与えるかその大きさを測定するための指数を考案している。ROCとは企業の部門で利用されるコラボレーションから生じる「改善」の度合いを、コラボレーションソリューションへの投資金額でわった数字で、これを使うことで、従来のROIでは定量化が困難な分野における投資収益を計算できるようになるという。
 たとえばROIでは、企業の評判を維持するという広報業務のようなものの投資収益を金額ベースで算出するのは不可能ではないにしても非常に難しかったのが、ROC 指数を使えば、企業の評判維持の活動において、コラボレーションを通じて得られたメリット(たとえば、情報公開の迅速化や顧客への連絡や相談の品質の向上など)の定量化が可能だという。
 以下ホワイトペーパーからその計算式の部分(7ページ)だけキャプチャしたものを貼っておく。 

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 ホワイトペーパーには、企業の部門毎のROCの値が載っているがこれによるとコラボレーション導入によって最も恩恵を受けるのは、販売(営業・セールス)部門の5.2、続いてがR&D部門で5.1となっている。ちなみに最も低いのは人事部門で2.4だ。ちなみにコラボレーション/コミュニケーション系のツールを企業に売り込む場合に時々人事部門が担当窓口になるが、この部門からの回答値が最も低いのには十分注意したい。もっとも懐疑的な部門を旗振り役に仕立て上げるにはそれなりの知恵が必要だろう。
 ROCを企業規模で分けた表が9ページに載っているのでこちらも引用するが、当たり前だが1000人以上の大企業のほうがコラボレーションの導入効果を刈り取り易い。

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 このコラボレーションの具体的な効果については、各部門のマネージャーより回答を集めている(11ページ)
 販売部門では、「UC&C ツールが顧客との販売コミュニケーション品質の向上に役立つ」という質問に49%が「そう思う」または「非常にそう思う」と回答、「販売活動の成功率の向上に有効」が45%、「販売コストの削減に有効」が41%、「販売サイクル時間の短縮に有効」が42%だった。
 R&D(新技術・新製品の開発)部門では、「先進的コラボレーションツールによって製品開発のスピードが向上すると思うか」という質問に44% が「そう思う」または「非常にそう思う」と回答、「市場における成功の確率が向上するかどうか」という質問には42%、「品質が向上するかどうか」という質問には44%、「開発コストが低減されるかどうか」という質問には41%が「そう思う」または「非常にそう思う」と回答。

 その他の部門でも、マーケティングだと「既存顧客とのコミュニケーションの品質向上に効果がある」で44%、「新規顧客獲得の成功率が向上する」で41%と高い数値を得ているし、広報部門のマネージャーの49%は「コラボレーションテクノロジーによって広報情報の品質が向上」すると言っている。
 最もROCの低い人事部門でも、「コラボレーションテクノロジーは社員の採用活動に有効」だとする質問には39% が「そう思う」または「非常にそう思う」と答え、「社員の採用や雇用の際のコミュニケーションの品質が向上する」に43%、「採用と雇用のスピードの向上に役立つ」には39%、「コストの削減効果」に39%が「そう思う」または「非常にそう思う」としている。

 ホワイトペーパーの最後には、日本企業の特徴を説明した別紙がついているが、ここには

 グローバル市場で展開している日本企業に競合他社と比べた売上増加の評価を尋ねた結果、コラボレーションテクノロジーを活用している企業では 47% であったのに対し、活用していない企業では 28%だった

とある。もうすぐ2009年も終わりだが2010年を制覇するためのキーワードのひとつが見えてきたきがする。 

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