日本の電子書籍、普及はいつ?
ICT総研は7月10日、2012年度電子書籍コンテンツ需要予測に関する調査結果を発表した。同社の調査によると、2011年度の電子書籍コンテンツ市場規模は671億円で、同社が予測していた700億円を下回った。スマートフォンやタブレット、電子書籍専用端末向けの電子書籍市場がまだ活性化しておらず、2012年度以降の市場成長も当初想定されていたものより鈍くなるとしている。電子書籍コンテンツの市場規模(出典:ICT総研)出典: ICT総研も電子書籍市場予測を発表――2016年度で1840億円 (ITmedia eBook USER)
このレポートで、2011年度の電子書籍市場規模671億円という数字は、一見大きな規模を獲得しているように見えるが、実はこの大部分が従来型携帯電話向けで、若者向け、マニア向けのコミックなどが中心である。すなわち、一般の書籍コンテンツではなく、日本の従来型携帯電話の環境で育った独自コンテンツであることに注意したい。一般の書籍が電子化された電子書籍をイメージする場合、従来型携帯電話向けコンテンツは、一旦除外して考えた方が良い。
電子書店
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運営会社
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対応端末(注) |
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iPhone, iPad,
iPodtouch |
Android | PC | Mac | 専用端末、ほか | ||
Kindleストア | Amazon | ○ | ○ | △ | △ | Kindle |
ReaderStore | SONY | △ | ○ | × | × | SonyReader, PSVita |
GALAPAGOS | シャープ | ○ | ○ | × | × | |
koboイーブックストア | 楽天 | × | × | × | × | kobo |
紀伊國屋書店 | 紀伊國屋書店 | ○ | ○ | ○ | ○ | SonyReader,
Panasonic UT-PB1 ほか |
honto | トゥ・ディファクト | ○ | ○ | ○ | × | |
BookLive! | BookLive | ○ | ○ | ○ | × | Lideo |
●今年こその期待
そんな日本の電子書籍市場であるが、ようやく大きな変化が起きそうな予感がする。
一番大きいのはスマートフォンやタブレット端末の普及だろう。
これまでの電子書籍は専用端末(Amazon kindle、 SONY Readerなど)で利用するイメージが強かった。従来の携帯電話の画面は小さく、細かい文字を表示するには厳しいものがあり、電子書籍の普及はマニア層など一部のユーザにとどまったと考えられる。
しかし最近では、より大きな画面をもち、電子書籍にも向いたスマートフォンやタブレット端末で電子書籍コンテンツが楽しめるようになってきた。今後はどの電子書店のコンテンツでも、どのスマートフォンやタブレットでも利用できるのが当たり前になるだろう。そうなると、プラットホームの乱立の問題はかなり解消される形になりそうだ。
また、スマートフォンなら、従来の携帯電話独自コンテンツだった電子書籍の読者にも、より一般的なジャンルのコンテンツに乗り換えやすいのもメリットだ。
このエントリーを書き始めたところでタイミング良く、MMD研究所の調査レポートが発表になった。2カ所ほど引用しよう。
次に、「電子書籍を読んだことがない」と回答した人のみ(N=244)を対象に、電子書籍を読んだことがない理由について調査したところ「電子書籍を読める端末を持っていないから」が50.0%と最も多く、次いで「紙の書籍のほうが好きだから」が33.6%、「電子書籍は読みづらそうだから」が27.9%という結果となっている。
出典: 電子書籍を読んでいない人の電子書籍利用意向は35.7% (MMD研究所)電子書籍利用意向者(N=132)を対象に電子書籍を読むならどの端末で読みたいかという質問をしたところ、「タブレット端末」が53.0%と最も多く、次いで「スマートフォン」が45.5%という結果となった。ちなみに、電子書籍専用リーダーは26.5%という結果となっている。
出典: 電子書籍を読んでいない人の電子書籍利用意向は35.7% (MMD研究所)このレポートを読むと、電子書籍に興味のある潜在ユーザが、電子書籍を読むためだけに専用端末を購入するのをためらっている姿が見えてくる。これまでよりも手軽にタブレットやスマートフォンで電子書籍が読めるようになることで、気軽に電子書籍とつきあうことができるようになり、普及はどんどん進みそうに思える。
また、昨年のAmazonの日本における電子書籍販売の本格スタートも大きな出来事だった。Amazonの電子書店kindleストアは、電子書籍の普及を引っ張ってきた存在であり、専用電子書籍端末としてのkindleを販売するだけでなく、早くからスマートフォンやタブレットでも同じコンテンツを快適、便利に楽しめるのも特徴としてきた。しかも、複数の端末を持ち替えながら、続きを連続して読み進めることができる便利な仕掛けまで用意されている。このように利便性でも他の電子書店をリードしてきたのである。Amazonのもうひとつの武器は、出版社だけでなく、個人が簡単にコンテンツを執筆して出版できるシステム『kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)』を用意していることだ。このシステムにより、Amazonは書籍コンテンツを一気に充実させる可能性がある。そして、最大の武器は海外における電子書籍の圧倒的な提供タイトル数やユーザ数だ。これを背景に、同社が日本でどのように電子書店のサービスを拡充させていくか、注目したい。
もちろん、既存の日本の電子書店も負けてはいない。日本の事情に合わせたやりかたで魅力的なタイトルをそろえ、Amazonを迎撃するだろう。従来型携帯電話向けコンテンツでこれまで成功してきた電子書店もその経験を生かし、一般書籍にも力を入れてくるだろう。また、AppleやGoogleも海外で電子書籍分野に既に参入しており、まだ本格的でない日本市場への今後の展開には目が離せない状況だ。
日本における電子書籍の本当の普及元年は近いかもしれない。
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