動詞で表現することの重要性(ブランディングの話その10)
友人たちとの対話より:
英語で「grievance」という単語があります。翻訳が難しい言葉ですが、自分が不当に扱われたという事実(あるいは妄想)に対する怒りを意味します。
この「grievance」から生じる憤りには、麻薬と同様の作用があって、それによって人は「自分に酔う」ことができるという研究結果があります。
"It turns out that your brain on grievances looks a lot like your brain on drugs."
https://www.politico.com/news/magazine/2020/12/12/trump-grievance-addiction-444570
もうひとつ、翻訳が難しい言葉で、「ルサンチマン(仏:ressentiment, 英:resentment)」というのがあります。
これも自分が不本意な境遇にあるのは他人のせいだ、というような負の感情です。
ルサンチマン(ressentiment)とグリーバンス(grievance)が社会全体を覆うと、第一次世界大戦後のドイツのようなことになります。
米国や日本も、近年それと似たような状況に陥っていますが、今年は、その一歩手前で踏みとどまった。
デマゴーグの失墜は、メーターの針がマイナスからようやくゼロに戻ったことを意味します。
それはバッドニュースではないけれども、積極的な成就を意味するものではありません。
正しいか正しくないかを「敵か味方か」にすりかえる詭弁がまかり通る世の中。
それでも、真実を探求し、表明し続けることが大切です。
《闘争的であるためには陰鬱でなければならぬと考えるな。たとえ戦う相手がいかにいまわしいものであろうとも。》(ミシェル・フーコー)
「Black Lives Matter.」というフレーズの最後:「Matter」の部分は名詞ではありません。
「Black(形容詞:黒人の)Lives(名詞:生命・生活)Matter(自動詞:重要性を帯びている)」という第一文型(S+V)の構文です。
主語の「Black Lives」を「You」に置き換えて「You Matter.(大切なんだ)」という言い方をする場合もあります。