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大量消費をボイコットしはじめた生活者視点からのインサイトメモ

ビジョンとインサイト(ブランディングの話その6)

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ある友人との対話から:

北極星のように道標となるビジョン。

これは、カントの語法でいうと「統整的理念」にあたるものです。(統合的に整合性があるというような意味)

完璧には実現できないけれども、絶えずそれを目標として、徐々にそれに近づこうとするようなもの。それが無い組織に真の「ブランディング」はありえない。

それに対して、一般に「企業のミッション」といわれるようなものは「構成的理念」といわれるものです。

しかし一般的には、こちらの方が「ビジョン」とか「理念」と呼ばれることが多い。

ディスカッションにおいて、よく「具体的には?」と聞き返す人がいますね。具体性がないとイメージできないのです。

広告のクリエイティブという仕事の存在意義も、後者に近いのかもしれません。「具体的には?」とオーディエンスに聞かれたときに「こういう感じです」と見せるわけです。

高次元のビジョン(統整的理念)を世に問う広告が、たとえば「Think small.」シリーズの初回の新聞広告だとします。

それを、より現実的で具体的な価値(構成的理念)に落として見せたのが、その後、何年にもわたって展開された一連の広告だったといえます。

「Think small.」というビジョンを世に訴えると、マーケットのオーディエンスから「具体的には?」と聞き返される。

それに対して、たとえば「Cheap new. Expensive used.(新車で買う時は安く、中古で下取ってもらう時には高く売れる)」と示してみせる。それを何年も続けたわけです。

インサイトとは:"消費者の意識や感情の根底にあって、彼らの物事の感じ方や、考え方、行動様式を決定するような因子を理解し、突き止めることである。特定のインサイトを明確に把握することによって、もっとも効果的に消費者にアプローチするメッセージを作り出すことが可能になる。"

(Paul R. Lorant)

生産者や生活者の「実状・実情(実際の状況と気持の有り様)」を知ること(実感すること)を「インサイト」といいます。

広告業界では「消費者のインサイト(実情や心情)」を把握することが大事であると、よく言われます。

しかし、その逆も真なのです。

生産者の「実状・実情(実際の状況と気持の有り様)」を消費者に知ってもらう。

すなわち「生産者のインサイト」を掴んでもらう。これがコミュニケーションの役割です。

マーガレット・ハウエルの50周年を記念する動画は、ストレートにブランドの考え方を訴求しています。

コアなファンのブランドに対する「確信」を深めるような効果があります。

マーガレット・ハウエルさん:
"私の仕事の仕方は家具デザイナーや建築家のやり方に似ていると思います。私は実用的なものをデザインしているからです。"

風景の色と洋服の色が同じであることが印象的で、さりげなく「ブランドカラー(ブランドの色と個性)」を表現しています。

インサイト(in・sight)を字面の通りに訳すと「内観・内視・内覧・内見」等々... どれも訳語としては当てはまりませんが。

意味として一番近いのは「見識」でしょうか。あるいは「本意・本音・本心」...「内観」だと、仏教とか心理学的な意味合いになってしまいますね。

生活クラブ生協が、何十年も前に始めた取り組み。

消費者(生活者)が生産現場へ足を運び、養豚場の現場を目の当たりにし、農場で収穫を手伝い、生産者と語り合う。

消費者:「生産者は私だ」
生産者:「消費者は私だ」

とすれば、「インサイト」とは、言葉の字面通りの意味で「思いやる」という意味になります。(哀れむという意味ではない)

「思いやる」というのは、内部・外部の二元論を乗り越えて、コミュニケーションする、という意味になりますね。

この本のタイトル、都市と地方を「かきまぜる」という言い方が良いのは、「内面の投影に過ぎないような外部」すなわちナルシシズム的自己満足に陥ることが無いからです。


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