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大量消費をボイコットしはじめた生活者視点からのインサイトメモ

正当性と正統性について(ブランディングの話その1)

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友人との会話から:

・ブランディングが成功するのは、「正当性」が「正統性」を獲得する場合です。

・物事を好悪あるいは美醜でハンドルする人は、「正統性」を拠り所にします。(血統・ブランド性等)

・物事の「正当性」を訴えるだけでは、なかなか賛同が得られないのは、人は「正統性」に弱いからですね。

・たとえば、ナチスドイツの国策プロジェクトだったフォルクスワーゲンが、戦後アメリカ合衆国に渡り、敏腕クリエイティブディレクターWilliam Bernbach氏が率いるDDB社に広告制作を一任したとき、この広告代理店が推し進めたのは、あくまでもVWに乗ることの「正当性」、言い換えれば「合理性」を訴求することでした。

・しかし、そこには「正当性」を訴えるだけでなく「正統性」をエスタブリッシュするための絶妙なスパイスが利かせてあったのだと思います。

・そうしたマーケティングエフォートの積み重ねの結果、フォルクスワーゲンは、アメリカの若者のライフスタイルに欠かせぬ小道具としての「正統性」(ブランド性・レレバンス)を獲得するに至りました。

・興味深いことに、「正統性」に依拠するブランドは、むしろ製品の「正当性」を訴えます。(この素材は通気性がいいとか、耐久性に優れるとか)

・「正統性」(由緒・血統等)を声高に訴えるのは、恥知らず(shameless)なことだと、人は内心感じているのかもしれません。

・「正当性」(利便性等)を語っているのに、「正統性」につながってゆくコミュニケーションができれば、それが一番。

・製品の「正当性」「合理性」を訴求しつつ、隠れたメッセージとして「正統性」を感じさせるのが、ブランディングの秘訣といえそうです。

・普遍的メッセージをタイムリーに放つのが NIKE社の内規:

関連記事:
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2005/31/news030.html

参考文献:

"Think small." was a provoking statement. It invited Americans to undertake a paradigm shift in their attitudes and values. It was a call to action for Americans to think outside the norm, to reconsider their value criteria, especially in terms of selection of cars. Moreover, the copy itself was a twist of words. The standard expression is to "Think big". No one at school or work advised to "Think small". As a result, a substantial segment of the Target Audience responded to the advertising and Volkswagen became the best selling compact car in America for many years.(Paul R. Lorant "Let's Talk")

"Think small."というのは挑発的なセリフです。このセリフは、アメリカ人の態度や価値観にパラダイムの転換を迫るものです。アメリカの人々に対して「平凡な考え方を脱して、車を選ぶ時の価値観を見直そう!」と呼びかけたのです。それだけでなく、コピーそのものにもちょっとした仕掛けがありました。"Think big."(大きく考えよう)という言い回しは、日常ごく普通に使われる表現です。逆に、学校や職場で、人から"Think small."(小さく考えよう)と言われることなんて、全くあり得ないことです。でも結果として、かなりの数の消費者が、この広告に反応し、フォルクスワーゲンはその後何年にもわたってアメリカで最も売れた小型車になったのです。(Paul R. Lorant "Let's Talk")

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