Walter Beckerが自ら愛聴した曲「Deacon Blues」
ウォルター・ベッカーの訃報を聞いてからは、スティーリー・ダンの歌を聴くことができなくなった。
「Aja」が発売されたのは1977年、高校2年の秋(修学旅行と体育祭と文化祭の季節)。当時のクラスメイトに文化的造詣の深い女史がいて、「Aja/Steely Dan」という、どっちがバンド名だかよくわからない新譜を貸してくれた。それが「Steely Dan」との出会いだった。
家に帰って、借りた「Aja」を聴いてみたら、1曲目は何これ?白人ロックなのにダンスミュージック?2曲目は何これ?ウェザーリポート?3曲目は何これ?イーグルス?
ボーカルの声質も、歌というよりはベシャリのようでマジメに歌ってない感じがした。一聴してロックとロイクとジャズがごちゃ混ぜになったような音楽だなぁと思ったけど、それが「Steely Dan」なのだ。
何曲か歌詞をおぼえたのは大学に入ってから。歌詞の意味がわかってきたのは厄年を過ぎてからのこと。
2015年のインタビュー(Wall Street Journal)によると、ウォルター・ベッカーが特に気に入っていた曲は「Deacon Blues」で、ミックスが完成してから自分で何度も聴きかえしていたらしい。
「Deacon Blues」は以下のような歌:
"皆はやめとけというが
俺はこの街を出て
サックス吹きになるんだ。
スコッチを夜通しあおって
クルマに轢かれて死ぬのさ。
(ヘッセ『車輪の下』へのオマージュ)
この歌を書いたときは我ながら泣けてきたよ。
演奏が長すぎたらゴメン♪"
途中で主語の立ち位置がズレて、歌そのものについて語りはじめるのは、彼らの文学的素養が為せるご愛嬌。
ウォルター・ベッカー曰く、これはもちろんサクセスストーリーではない。敗者の歌。
"勝者が名を残すというのなら
俺は敗者として名を残す。
強豪アラバマ大学のチーム名が「Crimson Tide(赤潮と異名をとる)」なら
俺のことは「Deacon Blues(ブルースに身を捧げる助祭)」と呼んでくれ。"
しかしそこには自由がある。
This brother is free
I'll be what I want to be...