分散ストレージの導入を試みて、頓挫した話
妻の実家に帰省したら子供が倍に増えて破壊力が四倍になるっていうシナジーがぼくを骨にしそうです。
ここ何件かのエントリーでBlockchainを応用した分散ストレージについて書きました。
ぼくにとっては夢のある話であり、実現することで企業や個人のデータ保持の在り方が変わることに期待を寄せています。
そんな現在ですが、かつて、Blockchainが出る前に分散ストレージを導入しようと試みた時期がありました。
その頃導入を検討していたシステムにはファイルの暗号化がなかったので、あくまでローカルネットワークでの利用が前提でした。
結果から言うと導入には至らなかったのですが、今の状況を見て思うところがあったので書き記したいと思います。
分散ストレージの最大の課題
分散ストレージを企業に導入しようとしたのが6年くらい前。
その当時、どうしても実現しなかったのが信頼性の担保っていう、サービスの根幹部分でした。
ローカルネットワークでファイルを共有するので、データの漏洩については通常のセキュリティに準じて対策をすればよかったのです。
でも、ファイルの可用性をどうするか、が問題でした。
当時はITによるコスト削減が盛んだったと記憶しています。ただ、IT化の主役たるPC自体が電気を食うというなかなかの自己矛盾を抱えていました。
そこで、社員が長時間退席するときにはPCの電源を切るか、スリープさせるルールがあらゆる企業で徹底されたのです。
そうなると、分散ストレージの場合、ファイルを保存しているPCが起動していないといった事態が高頻度で起こることが予測されました。
そのための対策として考えられる方法として、PCの電源はつけっぱなしにするというのがおもいつきます。
ただ、それは上述した状況により採用できるはずもなかったのです。
では、可用性を担保するためにサーバーを一台投入するというのはどうか、となりました。
それはそれで、分散ストレージという考え方を根本から否定するということですから、当然却下。
それ以外にも、デザイン会社だとファイルあたりの容量が大きいので、ネットワークへの負荷が大きくなりすぎるから提供できないとか。
どう考えても普通にファイルサーバーを導入するほうが合理的でした。
インターネットを通じてディスク領域の共有ができれば、もう少し状況は変わっていたでしょう。
しかし、暗号化されていないデータをインターネット上で共有するなんて言語道断ですね...
そんなわけで、分散ストレージの導入は叶わなかったのです。
クラウド・ストレージサービスが解決したこと
それから数年後に、Dropboxがシェアを伸ばし、クラウド・ストレージサービスが充実してきました。
DropboxはPCからクラウドのディスク領域にファイルをコピーする経路を暗号化し、クラウド上のファイルをファイアウォールで保護することで、安全なファイル共有を実現しました。
他者との共有も、メールアドレスを指定するだけで自動的に同期することができます。
つい最近までは、クラウドストレージでも充分なんじゃないかという気でいたんです。
しかし、Blockchainを使った分散ストレージという概念を知った今、もっと便利で安全なファイル共有システムに希望を見出しています。
最後の課題、ネットワークの負荷
Blockchainが安全性を担保することで分散ストレージが使い物になるならば、ファイル保存用に新たなストレージを用意する必要がなくなります。
当然、コストは低くなるし、可用性も高まることでしょう。世界中のコンピューターがバックアップディスクにもなりうるので。
しかし、ファイルを分散させ、なおかつ常にファイルを取り出せる状態を保証するとなると、相当の数のファイルコピーが必要になります。
そうなると、ネットワークの負荷が問題になってきます。
現在、Bitcoinのネットワークでも高負荷が問題になる場合があります。
Bitcoinのネットワークの場合、取引きの記録だけなので一つ一つの情報はとても軽量です。
それでも、取引量が多くなってきてネットワークが正常に動作しない状況になる場合があるのです。
ファイル共有ともなれば、画像や動画もあります。それらをネットワーク上で大量にコピーするとなると、起こりうる状況は想像に難くないでしょう。
いくらネットワークのスピードが上がり、転送容量も大きくなっているとはいえ限度はあります。
モバイルネットワークですら、通信料規制をしないと間に合わない状況に、すでになっています。
ネットワークリソースの問題をどう解決するか。解決できなければP2Pの分散ストレージは絵に描いた餅になってしまいます。
Blockchainという技術に期待もありますが、残されている問題の大きさも気になるところです。
社会に与えるインパクトが大きいぶん、課題も多いです。
それでも、なんとか乗り越えてくれることを願っています。