【書評】ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ
こんにちは、多少涼しくなっても雨でじめじめしていると滝のように汗をかく松井です。
今夏の書評第二弾として取り上げるのはジョブズ・ウェイ です。
著者はアップルの初期からジョブズを支えてきた人物で、今までの書籍に無いほどアップルやジョブズの実情を描写しています。
これまでのジョブズ関連書籍では、まるでジョブズが魔法使いであるかのように書かれているものが多かったように思います。iTunes Storeの交渉を3分で終わらせたなどというのはその最たるものでしょう。
しかし、本書を読むとジョブズが意外にも、そして徹底してビジネスの基本を踏襲して行動していることがわかります。時々取りざたされるプレゼンテーションのうまさなんていうのはその他の重要なことに比べたらたいした問題ではないといえます。
彼のすごみは徹底した消費者思考とコミュニケーションの深さ、妥協の無い製品開発でしょう。
何をそんな当たり前のことを、と思うかもしれません。でも、その当たり前のことを、おそらく世界で一番徹底しているのがジョブズなのではないでしょうか。
本書を読んで特に印象が深かったのは「根回し」と「ボトムアップ」です。
根回しといえば、最近ではごく日本的で古いビジネスのやり方として、企業からなくすべき文化の筆頭に挙げられることが多いように感じます。しかし、アップルのみならずアメリカの先端企業でも根回しというのは頻繁に行なわれています。違うのは根回しの性質ではないでしょうか。
日本の根回しはコネクションを作るためであって、会議の場で有利に進めるために協力者を増やすことが目的におかれているように思います。一方アメリカの根回しはコミットメントであり、会議の段階ではすでに合意がとれています。ジョブズが音楽業界のトップを相手に数分で合意を得たというのも、傍目から見たらその場で説き伏せたような印象でも、実際はそこに至るまでに相当な時間をかけて説得していたのでしょう。
ボトムアップについては日本人であればよく知るトヨタの手法と同じようなもので、従業員一人一人がアイデアを、遠慮することなくいうことができる環境を作っています。ジョブズといえば独裁的なイメージで語られることが多かったように思いますが、意外にも人の意見をよく聞くのです。
このように、今までなかなか語られなかったジョブズの側面を見て、やはりビジネスで成功する人には共通する基本姿勢みたいなものがあるのだなぁと感じました。本書は物語としても読み応えがあるのでビジネス書のたぐいを好まない人でも興味深く読むことができそうです。