オルタナティブ・ブログ > ITは心の仕事です >

テクノロジーに心も仕事も奪われそうな日々を綴ります。

地方における防災ネットワークの構築

»

前回のエントリーでお知らせしたとおり、岩手県宮古市にて震災の被害状況を見てきました。
そして、実際に被災地を見てきて、ITが果たして地方で活躍する余地があるのかという疑問が湧きました。住民のほとんどが高齢者であるような地域でもITを活用してより情報の交換を活発に行い、有事の際にも円滑に対応できる方法はないのだろうかという疑問について今回は考察してみたいと思います。

地方での障壁

地方でITを活用する上で障壁となるのはリテラシーの問題でしょう。今となってはインターネット回線もかなり普及していますし、docomoの3G回線はさらに広範囲に敷かれているので、人のいるところはインターネットでカバーできている状況です。

しかし、当然のことながらインフラが整っていてもリテラシーが低ければ活用することは難しいでしょう。今回の震災ではtwitterが活躍しましたが、それとてリテラシーの高い層で情報交換が行われただけで、被災地の状況などはなかなかやりとりが行われなかったというのがのです。

そう言った中で地方都市でITを導入しようと思えば、ITの理解者が現地に住むか、現地にいなくても情報を取得することができるようにするか、どちらかの条件が必要になります。

しかし、現地に滞在することなく情報を得るというのは相当に困難ではないかと思います。恒例の方々の情報を得ようと思うとどうしたって電話や訪問による収集が必要ですし、そもそも地方では住人以外はよそ者という認識でコミュニケーションを図ることすら困難ではないかとおもいます。

そうなると、方法としては現地に住んで情報を収集するということになります。そして、願わくばある程度地域住民に顔を知られていることが望ましく、もともと住んでいる人々にITを活用してもらうことが最善の方法となります。

集合より分散の利を生かす

地方でIT化が進まない理由として若者の不在ということが挙げられると思います。ただし、当然のことながら全くいないわけではなく集中していないことが問題です。ITに限らず経済効果をあげる為には同業者がある程度集中的に存在している必要があります。それは、シリコンバレーや◯◯工業地帯が栄えてきたことからも明らかでしょう。

しかし、地方で防災ネットワークを作ろうという時にはこの逆に広範な地域を隈なくカバーする必要があります。そのため、一箇所に集中するよりも、IT拠点が分散している方が都合が良いのではないでしょうか。そして、インターネットの発展によりコミュニケーションの基盤がコストをかけず、しかもリアルタイムに行える現在では地域ネットワークを作るためにとても都合がいいように思います。

町や村のあちこちに時々いる若者が周辺の情報をインターネットで交換し合うことで隅々の情報をカバーすることができます。そのために費用もほとんどかかりませんし、その地域に生まれ育った若者であれば周りの方々とのコミュニケーションも円滑に行うことができるでしょう。これからの地域社会を支えるのはこうした分散型ネットワークになって行くのではないでしょうか。

地域ネットワークのビジネスモデル

さあ、それではこの地域ネットワークをどのようにビジネスにするかということですが、情報サイトでの広告収入とプレミアム会員からの会費収入というありふれた方法になるでしょうか。地方都市の情報を閲覧する層としては、上京した若者が地元の情報を得るためにみるといった状況がほとんどでしょう。このようなサイトでは高齢者向けの衣料品、雑貨のメーカーや販売店の広告効果が高そうです。

また、警備会社などにとってもアピール効果が期待できるでしょうね。地域の状況に不安を感じれば24時間体制の警備をお願いしたいという需要も見込めるでしょうし、場合によっては広告だけでなく営業支援なども可能になりそうです。また、現地の情報を把握している強みを生かして特産物の販売に関わることも可能でしょう。

プレミアム会員向けのサービスとしては買い物代行や個別の状況報告サービスというのもいいかもしれません。流石にしょっちゅう電話はできないけれど、常に親や親戚の状況を把握したいといった要求にはレポートメールなどで対応。顧客には時間のある時に文字で身内の状況を確認できるという利点を提供できます。買い物代行は地方に住んでる方向けのサービスで日用品などの必要物資をデータベースで管理して必要になりそうなタイミングで声をかけたり、日持ちするものなどについてはお買い得日に買いだめしておいていつでも安く提供するなどすると満足度が高くなるのではないでしょうか。

おわりに

今回のエントリーでは地方のネットワークをITによってつなぐということをテーマにビジネスを考えてみました。ボランティアでなくあえてビジネスとしたのには理由があります。

今、日本で失業率が高くなっていることが問題視されています。とりわけ、働く意欲はあるけれど働けないという方々の問題は深刻で、せっかくの労働意欲を生かせないという空回りは優先的に解消しなければという気がします。そういった方々の中には仕事はしたいけれど労働環境に不満があったり、生活コストが高くて、それを賄う仕事につきたいけれど高給な仕事は競争率が高くてなかなかつけないといった状況があることも考えられます。

そういったミスマッチを解消するために地方で、しかも先端技術を活用したビジネスが必要になると考えます。若い人の多くは新しい技術に触れる仕事をしたいという願望があると思います。地方には旧来の産業ばかりで先端技術を扱う会社はほとんどないため、若者が東京や大阪などの大都市に集中してしまうのでしょう。しかしこれからは働く場所は今まで以上に自由になります。インターネットにつながりさえすれば遠くの人とも交流ができるので一つの事務所に集まって仕事する必要はなくなっていくでしょう。こうした流れを利用して、地方でも若者にとって魅力的な産業を興すことができれば、地方へ若者を呼び戻し、失業率を改善することができるのではないかと思います。

Comment(2)