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盛り上がるブレストばかりが良いブレストじゃない。沈黙も含めて大事にしたい。(アイデア・デザイン・創造学を研究しているといろんなTipsに触れます。600文字で紹介します。)

属性列挙法(特性列挙法)

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VEを独学で学んでおられるビジネスマンやエンジニアの方向けに発想手法を紹介します。

発想手法:
属性列挙法(特性列挙法)


参考文献としては、と拙著で恐縮ですがです。


手法
(石井私見を含んでいます。正確に学びたい時には、創造力事典などをご覧ください)

属性列挙法は、改良を試みるものを、3つの観点でつぶさに見て、改良できないだろうか、と発想していく方法。

三つの観点は『名詞』『形容詞』『動詞』

『新版・創造力事典』によると
①名詞的属性...全体、部分、材料、製法
②形容詞的属性...性質
③動詞的属性...機能
とある。

■ステップ1
属性列挙法(特性列挙法)は、この3つの観点を念頭におき、改良を試みるものが持つ属性(名詞的属性、形容詞的属性、動詞的属性)を列挙していく。※1 ※2


※1(ここは、人間の発想の観点領域から、大まかにいうと、半分以上をカバーする観点のセットを採用している。アイデア・スイッチにおいて紹介した発想の観点の大きな領域"6観点リスト"は「ひと・もの・プロセス(動きや関係性)、環境、意味価値、五感」として紹介したがこれは必ずしも、唯一無二ではない。その使い手の専門領域や課題によっては、この6観点の切り口は違った基本視座へ写像され直される必要がある。それを踏まえたうえで一歩踏み込んでいうと、この名詞、形容詞、動詞、という3つの切り口は、もの(名詞)、五感(形容詞)、プロセス(動詞)、それから、周辺的な意味合いで、ひと(動詞)、意味価値(形容詞)、があり、観点領域上、ほぼ含まないのは、環境、だけである。対象とする物体が、巨大構造物の場合には、物の改善という意味に、環境レベルも含まれる。その場合は環境(名・動)となろう。机の上に乗るようなサイズの物体を対象に、かつ、改善を考える、という思考活動の場合には、十分であろう。)

※2(現代のように、感性を正面からとらえるタイプのアイデア発想や構想をする時用に、「○○詞」として、1つ加えてもいい、という余地を一つ与えてもらったならば、「感嘆詞」を加えたい。④感嘆詞的属性...、として、書くならば、「驚き、感動、感心、強い不満や激しい賛同、危険な利用に伴う痛み」など)

■ステップ2
重複するものを1つにし、矛盾するものはどちらかに絞る。

■ステップ3
名詞的属性、形容詞的属性、動詞的属性、の3つに、列挙したものを分類する。

■ステップ4
分類したものを見て、各属性ごとに漏れがないか、考えてみて、あれば加える。


■ステップ5(発想)
属性一つ一つに対して、その属性をもっと利用したり、別の物に置き換え、改良案を考えてみる。


以上が、発想のステップ。

この手法の本質は、非常に単純だが人間の発想の特性をうまく活用している。
新版・創造学事典の同技法の説明冒頭を引用すると
「ポイントは、簡単に言えば「問題は小さくすればするほど、アイデアが出やすくなる」と「いろいろな物(製品、部品)には、それぞれ属性がある」の2つの考え方を組み合わせて考え出された技法なのである。」

シネクティクス(創造技法の1つ)のエキスパートは「アイテマイズ・レスポンス(項目立てて発想する)」という言葉を使うことがある。マトリックス法にちかい考え方で、発想する対象が広すぎる場合は、条件や属性などで積極的にカテゴリに分けて、そのカテゴリーの中で発想する。新しいウォーキングの方法、という場合なら、雨の日、晴れの日、風の日、などなど、に分けてその中での新しいウォーキングの方法を発想し後に発想していく。もちろん、カテゴリに着る軸は自由度がある。スニーカーの時、革靴の時、はだしの時、などなどで、領域を切る(カテゴリーを作れば=項目を立てれば)、発想されるものは違う。)



実際に、この方法を用いててアイデアを出すならば、どうなるか、やってみました。(アイデア創発の素振り、です)


発想例

■改良テーマ
明るい部屋でもプロジェクターを見えやすくするにはどうすればいいか。
(スクリーンの改良案)

■ステップ1

①名詞的属性

全体・部分)大きいシート、巻き取るばね、拡げておく棒、立たせるスタンド、反射を防ぐざらざらの表面、黒いケース
材料)金属、樹脂
製法)プレス、接着、かみこみ

②形容詞的属性

性質)重い、まっすぐ
状態)ざらざら、ぺらぺら、白い

③動詞的属性

機能)沢山の光を反射する(投射光をぼかさない)、色の発色を妨げない(会場の壁などは色にバイアスがかかる)
   映像をかけさずに表示する(壁だと柱や壁材の接合部のくぼみが情報を減らす)

■ステップ2

重複しは、ざらざら
矛盾は、黒いケースの黒い(こっちは本質的ではないので削除)

それらを処理すると、以下。

大きいシート、巻き取るばね、拡げておく棒、立たせるスタンド、反射を防ぐざらざらの表面、ケース
金属、樹脂
プレス、接着、かみこみ
まっすぐ
ざらざら、ぺらぺら、白い
沢山の光を反射する(投射光をぼかさない)、色の発色を妨げない(会場の壁などは色にバイアスがかかる)
映像をかけさずに表示する(壁だと柱や壁材の接合部のくぼみが情報を減らす)


■ステップ3

①名詞的属性
大きいシート
ケース
金属
プレス
樹脂
かみこみ
接着

②形容詞的属性
反射を防ぐざらざらの表面
ぺらぺら
白い&色の発色を妨げない

③動詞的属性
巻き取る(ばね)
拡げておく(棒)
立たせる(スタンド)
沢山の光を反射する
映像をかけさずに表示する

■ステップ4

名詞的属性に、素材という意味での「布」が抜けているので、加える


■ステップ5(発想)

①名詞的属性
大きいシート 
→ シートをもっと大きくしひさしを作るか、蛍光灯を覆うシートを付ける。
→ 特になし
ケース
→ ケースが、蛍光灯カバーになるか、カバーのマグネット収納場所になっている
金属
→ 放熱性がいいので、蛍光灯カバーに
プレス
→ カバーにしたときの放熱性と万一の落下時の安全性を考えた形状に
樹脂
→ 特になし
かみこみ
→ 天井に天幕を張ったらその一端を固定するクリップが付いている
接着
→ 天井に一時的に張り付く、巨大ポストイット(イーゼルパット的な)を付属させる。


②形容詞的属性
反射を防ぐざらざらの表面
→ 表面をすこし凹面に(天井に近い部分の蛍光灯からの視野角を減らす)
ぺらぺら
→ 二枚組にして、一枚は、天井に静電気で張り付けられるように。
白い&色の発色を妨げない
→ 照らされた色に感応し、徐々にその色の発色をする特殊な素材を使う(仮説的な案)


③動詞的属性
巻き取る(ばね)
→ 蛍光灯カバーはマグネットでくっつけて、ロールスクリーン的に引き出せる。
拡げておく(棒)
→蛍光灯の縁の中で遮蔽布を突っ張らせる棒とか
立たせる(スタンド)
→足の付いた扁平な傘のようなものを、蛍光灯の下に設置して、蛍光灯すれすれに拡げる
沢山の光を反射する
→蛍光灯の波長領域だけを吸収してしまう表面材にする(仮説的な案)
映像をかけさずに表示する
→逆にかけさせて使えないか。会場が明るい場合、スライド画像の1/4だけをクローズアップして映し出せる機能を持ったプロジェクターを使い、大きな文字にして多少のボケでも見えるようにする(仮説的な案)


振り返り

以上のアイデアはすべて搭載するわけにはいかないが、自分がプロジェクターの一ユーザであるのか、会場運営者の立場で工夫ができるのか、プロジェクタと周辺機器の考案ができる立場なのかで、選ぶべき解が変わる。

VE的に進めるならば「技術的可能性」○△×、「経済的可能性」○△×、をつけていって絞りアイデアを発展させていく作業があるが、自分が一ユーザあれば、この時に「技術」「経済」が○になるのは「巨大ポストイット」案になるだろう。ポストイットならば、天井を損なうことなく剥がせるので、会場利用時に、ある程度融通が利くし、技術的・経済的には既存品利用なので問題ない。ただし、イーゼルパッド(巨大なポストイット)は、数千円するのと、片面しか糊が付いていないので、設置には工夫が必要ではある。設置時に天井に手を伸ばす点でも、即興ではできないが、これも設置のための高枝ばさみみたいなものを持っていれば即興でつけられる可能性はあるかもしれない。(事前に会場にことわっておく必要があるが)。

この文章を着ながら発想したので表現が未成熟だが、暗いスクリーンを何とかする方法としてはある程度、この属性列挙法で、アイデアが得られた。



以上が、属性列挙法(特性列挙法)の、石井なりの解説です。

VE(価値工学)を学ぶ企業人が、アイデア発想のステップでこの手法を調べる人が非常に多く、一方で、ネット上には最近の解説記事があまり多くはありませんでしたので、私なりに紹介してみました。

発想の手法というのは、人により相性があります。この手法が合う人、会わない人がいて当然です。もし、この方法があまり合わない場合は、拙著『アイデア・スイッチ』の中で紹介した、発想トリガー法の各種を利用してみてもらえたら幸いです。発想トリガーの中でもUsitオペレータ智慧カード(~TRIZ発明原理)あたりは、VEの領域での発想にも使いやすいかもしれません。

なお、『アイデア・スイッチ』の中には、属性列挙法の解説はありません。観点をもとにした発想の手法「6観点リスト」を紹介していますが、今回の手法を議論する上での視座として使いたいので参考文献にあげています。


 






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