アイデアの技法 「場所」
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場所? そう、場所です。「場所」というアイデア出しの技法をご紹介します。プロダクトデザインのすばらしい企業、IDEO社が発想の秘訣を7つ挙げていて、その一つに「場所」ということを言っています。
拙著「アイデア・スイッチ」を昨年の6月30日に出してから、もうすぐ一年が立ちます。この一年で、本を巡る世界が随分と変わりはじめましたね。「パブー」のようなものも出てきたのはおもしろいです。今後の本の電子市場において、スタンダードを握るのはどこでしょうね。
人は、その場所に行くと記憶を呼び起こされることがあります。その場所には、目から入る情報に加えて、周囲のざわめき、空気のにおい、肌で感じる雰囲気など、複合的な情報が脳を刺激して似たインプット信号の状況下で考えたこと、感じたことが引き出されやすくなるようです。
また、そこで感じたことを思い出すだけではありません。「現場に行く」というのは、非常に大切で、アイデア出しの優れた本『考具』でもそのことが述べられています。現場に入った名刑事が犯人のヒントを得ていくなど。私もある依頼でどうしてもアイデアが出にくいことがありました。よく考えるとその現場をあまりよく見たことがなかったことに気が付いて、その晩、徹底してその現場を観察してみました。デジカメで50枚以上の写真をとり、動画で端から端まで歩きながら撮影。そして、そこの状況を一番表している場所が見える場所に陣取り一時間、ひたすら人々の動きを観察しました。そこにどんな人が来るか、どれぐらいの割合か、何をするか、何を探すか、誰と話すか、そうすると仮説が浮かんだりします。その仮説に基づいてさらに観察をつづけると思い過ごしだったり、最後まで否定されない仮設としていきのこったり。また人々が不便だ、と感じていることを複数人の行動の共通点から気づくこともありました。おもしろいことに個々にはそれを強い不満とは感じていないようで、多分インタビューしてもそれをはっきり不満という人がいないように見えました。このような意味で、新しい場所でも現場に言ってみると着想というのは驚くほどたくさん手に入ります。
また、ブレストの相手がいないときも有効です。人々がほしいものが並ぶ高級デパートなどをまわると社会のニーズに関してさまざまな切り口が実感として得られ発想が広がります。最近の郊外の大型ショッピングセンターは結構センスのいいところも多く、家族と買い物に行くときに、自分の興味ないエリアでもいってみると意外な視点やコンセプトが得られたりします。娘の気ままな行動についていって普段なら手に取らないようなものを目にしてそれがヒントになって、実は今の案件の提案書の切り口が見つかりました。(もちろん、思いつきだけでは進められないので、その後に、それが適切かを検証します。)
以上、アイデア出しに煮詰まったらその「場所にたってみる」「現場に行ってみる」というのは意外と効果が高いのでぜひ試してみてください。(なお、体を使うというのはアイデア出しの秘訣の一つ、とIDEO社は言及しています。)
筆者のつぶやき
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