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クラウド戦役をZガンダム視点でわかりやすく解説するブログ+時々書評。

数学ガールみたいなクラウド本は書けないだろうか。クラウド技術に萌えの要素を見いだすとすれば

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世の中お盆休みのようなので、たまにはガンダムネタを離れてみるテスト。
先日、書店で見かけた「理系最強の萌え」というキャッチが目にとまり、数学ガールの
書籍を軽く立ち読みした後、コミック版上下を購入、帰りの電車で瞬読した。
まだ数式の詳細は追っていない。夏休みや帰省などでちょっとした時間ができる方には
オススメだ。数式を理解しなくても楽しめるので安心していただきたい。

なお、数学ガールのタイトルが書店で目にとまった背景には、たまたまTwitterのTLで
コメントしている方がいたことも影響している。個人的にはまだみぬ誰かの集合的な
行動履歴からの分析によるAmazonのオススメより、Twitterで日頃フォローしている人
(必ずとも親密な知り合いとは限らない)のネット人格がつぶやくオススメの方が
引っかかりが強い。

さて、この数学ガール、作者であるの結城氏のサイトから紹介文を引用すると、

『数学ガール』は、ミルカさん+テトラちゃん+「僕」という三人の高校生と、中学生
のユーリが、ひとあじ違う数学にチャレンジする楽しい《数学・青春・物語》です。
読み物形式でありながら、取り扱う数学的内容は本格的。学生さんから社会人まで
大人気のシリーズです。

ということだ。要するに、数学をネタにした萌え要素を含む学園モノである。
楽曲にこだわった「けいおん」の数学版というのは多少無理があるがあながち外れでもない。

私が感心したのはテーマの選び方が秀逸な点だ。一応高校生という設定なので専門的
すぎる話題はそれほど出てこないのだが、かといって、簡単すぎる中学生的公式暗記
レベルの話でもない。中でも多用されているのは数列の一般項を求めるパターン
認識的なテーマで、等比や階差でだいたい片付くのだが、たまにフィボナッチ数列
などもでてくるといった感じだ。また、どんなに簡単な問題でも、定義を厳密にしながら
法則を見いだしてゆくアプローチが一貫している点も、この程度なら好感が持てる。
(私自身はどちらかといえば厳密さより素早く近似解がわかる方がエライと感じる工学派だ)

大学で理系に進んだ人ならちょっとした優越感を感じながら、数学は苦手ではないけど
という方は「オレでもわかる」と感じながら、数式とかどうでもいいやという人をも
読者ととらえて学園モノのキャラ設定とストーリーで引っ張り、置き去りにしない
配慮はさすがである。文章や講演で1対多の説明を強いられる際、レベル感をどこに
フォーカスするか、どう揃えるかはかなり難しく、私もエバンジェリストの一人として
日々試行錯誤を繰り返しているのだが、数学ガールはこれを見事にやってのけている。

結果として、数学のおもしろさをできるだけ多くの人に伝えることに成功しているのである。

10年以上前のことだが、学部3年の頃、The Goalをはじめて読んだときにも、同じような感動があった。
その後翻訳版もでて、日本でも一大ブームとなったことは周知の通りではあるが、
もしかするとThe Goalが企業経営をテーマにした純粋なノンフィクションの小説と
思われている方もいるかもしれない。科学者の目線で経営的・財務的な課題を解決して
利益を上げてゆくストーリー仕立てになっているので、ある意味狙い通りなのだが、
エリヤフ・ゴールドラット氏が目論んでいたのは、彼が発見、提唱している
Theory of Constrains(制約条件理論)という概念の啓蒙だ。

誤解を恐れずごく簡単に言えば、短期的な改善が不可能なボトルネック工程が
あるのなら、前後の工程がいくら一生懸命働いてもそれは単なる無駄、もっというと仕掛や
在庫を積みまして企業の利益を損なう行為に荷担している愚かな行為である、という
情緒的に考える結果と異なる真実を、読者の感情を逆撫ですることなくうまく伝えているのである。
おかげで今では多くの生産スケジューリング製品で、制約条件理論をベースに改良を
施したアルゴリズムが実装され、世に広まっている。

若かりし頃にこのThe Goalと出会って以降、いつかは自分が向き合うクソマジメな
テーマを、ちょっと違う視点からわかりやすく解説するような非マジメ本を書いて
みたいというざっくりとした願望が、ライフワーク目標のひとつとなっている。

3ヶ月後に迫ったWindows Azureの商用サービス開始や、クラウド本ブームのおかげで、
ありがたいことに私のところにも「書籍を出しませんか?」という話がいくつかきて
いるのだが、ありがちな企画の枠組みを超えにくいのが実態だ。と、言い訳しておき
ながらも、意表を突く路線で乗り切るだけの企画を練る能力と執筆に没頭できる時間が
自分に欠如しているだけのことでもある。

そこで、読者の皆様に協力をあおぎ、夏休みの宿題をださせていただきたい。
いくつか数学ガールで印象的な場面を引用してみるので、これらをクラウドの要素技術や
基本的な考え方にあてはめて、萌えなイメージを残しつつ、うまく説明する例文を考えて
みていただきたい。このブログへのコメントでも、他でのつぶやきでもかまわない。

- 虚数以外のアイってあるの?

- 君にはωのワルツが見えているかな?
- 倍角公式だ。2つの姿が実は1つのものであると気づく。すると、とても素敵なことが起きる。

- ミルカさんは円周上にいるんだね…。単位円かな。僕からいつも同じ距離だけ離れてる。
- 私たちの腕の長さの和が1ならね。半径がゼロでも離れてる?
- 半径がゼロでも円は円。たった一点から成る円。

クラウド側で想定されるキーワードは、疎結合アーキテクチャ、分散ハッシュテーブル、
構造化オーバーレイ、KeyValueストア、タプル、イベンチュアルコンシステンシーなどと
いったあたりだろうか。頭が固いせいか、意外と難しい。いっそ結城氏に書いてもらうか。
クラウドに詳しいミルカさんのような実在キャラを見かけた方も、是非ご一報願いたい。

なお、本ブログAzureの鼓動はフェルマー最終定理における解析的ゼータや代数的ゼータ
とは無関係であり、断りなくゼータと記述したときには無条件にMSZ-006のことを指す。

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