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クラウド戦役をZガンダム視点でわかりやすく解説するブログ+時々書評。

IE6を本気で撲滅したいというならば、Windows7と.NETの啓蒙に協力していただきたい

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意外と思われるかもしれないが、IE6はマイクロソフトにとっても解決すべき大きな
課題なのである。マイクロソフトが新製品を出す際に、多くの場合最も困難な競合
相手は旧バージョンの自社製品なのである。

シェアをとりデファクトスタンダードの座を獲得するための手段にはいろいろあるが、
IE6とWindows XPの組み合わせが、提供開始当時から多くのユーザーに受け入れられて
きたことによるものでることは事実として認識しておくべきである。

Web系の制作会社に勤務していたり、ネット住民としての活動が大半を占めている方は、
世の中ほとんどの人々が自分と同じようにMacBookとiPhoneを使い、SafariかFireFoxを
デフォルトブラウザにしつつ、たまにChromeの最新ビルドで表示スピードを試してみる
という使い方を想定しているのかもしれないが、残念ながら現実はそうではない。

2009年現在、世の中を動かしているのは、ネットではなく実業だ。

多くのエンタープライズ企業が、業務遂行の手段としてPCやネットを利用しており、
彼らにとって、Webの最新動向が把握できることより、社内向けアプリが問題なく
動作することの方が、比較するまでもなく遙かに優先度が高い。むしろ、業務時間中に
インターネット上のWebサイトを見ることが生産性を低下させる懸念から、不要と思われる
社外アクセスを禁止、ブロックしている企業も少なくない。もちろん、自分の好きな
ブラウザを自由にインストールできない人たちも多い。PC環境の保守や問い合わせ対応の
コストを考えれば妥当な措置であろう。

結果、ネットブックで"good enough"という言葉が市民権を得るのを待つこともなく、
Windows XPとその当時のスペックのPC、およびそれらに最適化された業務アプリ
ケーションがそのまま使い続けられているというのが現実だ。

Vistaに関する見解はここでは差し控えさせていただくが、Windows7が普及すれば、
EU圏を除きブラウザは自動的にIE8となり、企業内のHTMLアプリケーションも多くが
IE8対応を行ってくれることになろう。その結果として、Web制作会社の方々の悩みも
多少は緩和できると思われるが、HTMLやCSSなどの表層的な互換性の問題以外に、
もうひとつ乗り越えるべき重要な課題がある。

アプリケーションの互換性だ。

インターネット向け、一般消費者向けWebしか手がけてない方もいるかもしれないので
念のため言っておくが、世の中のWebアプリケーションがすべてAJAXやらFlashでUIを
組んでいるわけではない。

中でも最も難易度が高いのは、Visual Basic6以前で構築されたロジックをActive Xで
ブラウザから操作できるようにしてあるアプリケーションである。社内向けのちょっと
したアプリケーションでこの手の実装が採用されているケースは非常に多い。これら
技術のとっつきやすさや、慣れた場合の生産性・保守性の高さ、ある種の心地よさが
招いた結果ではあるが、ここからの移行を促すのは容易ではない。

ここを突破する鍵も、Windows7の普及となる。

Windows7の導入が進むと、IE8だけでなく、アプリケーションの実行環境としての
.NETも最新版.NET3.5SP1以上がプレインストールされて配布されることとなる。
Visual BasicのフォームアプリはWPFで、Active Xなどのブラウザアプリは
Silverlightで作り替え、実行できる基盤がOSとともに用意されることになる。
これまで、XPで.NET3.5ベースのアプリを動かす場合には、.NETフレームワークの
インストールが必要であったが、これがあらかじめ内包されているということだ。

開発環境も、Web向けExpression製品群を含むVisual Studioも開発生産性はさらに
あがっており、Windows7やSilverlightアプリを開発しやすくなっている。これらの
普及があわせて進めば、ブラウザでネックになっているActive X互換性の問題も
徐々に解決してゆくに違いない。

今回は柄にもなく全編マイクロソフトの中の人的物言いになってしまって恐縮ではあるが、
日頃あまりエンタープライズアプリや、マイクロソフトテクノロジに触れる機会の
少ない方にも意識していただきたい視点を述べたつもりである。

なお、「.NETってもう3.5なのか」「WPFってなんだ?」という方には、コチラの書籍
お勧めである。ややもすると、開発者を置き去りに進化を急ぎすぎてしまったかもしれない
という反省から.NET開発テクノロジを体系立てて説明させていただいている。私は執筆に
携わっていないが、同僚のエバンジェリストの血と汗と涙の結晶が詰まった力作故、
書店で見かけることがあれば是非手にとっていただきたい。

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