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梅田望夫氏の「残念」で「ウェブはバカと暇人のもの」を読み、ReMIXの講演内容を考え直してみる

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梅田氏の取材記事に様々な見方があるようだ。編集のゆがみなのか、その場の
雰囲気なのか、答えにくいインタビューだったのだろうな、というのが感想だ。
後半は今日掲載されるようなので楽しみだ。梅田氏は将棋の話をさせてもらえるのか、
その内容を記事にしてもらえるのだろうか。

梅田氏が肯定的に紹介していた「ウェブはバカと暇人のもの」が気になったので
書店で探して早速読んでみた。また、栗原さん訳の「デジタルネイティブが
世界を変える」
も、内容的にひっかかったので改めてざっと読み返してみた。

私も英語圏での生活経験があるわけではないので、直感的な肌感覚としては正直
わからないところもあるが、日本と英語圏の地理的な違いだけで論ずるのは難しく、
「世代」的な観点をいれた方がすっきりするのではないか、と。

また、梅田氏のいう「英語圏」というエリアが英語圏全体を指しているのではなく、
西海岸のごく狭いエリアおよびそこに生活や思想の求心力を持ちながら
グローバルに散在する少数の人たちを指しているのではないかと思う。
「ウェブはバカと暇人のもの」の中川氏の表現では、「梅田さんのウェブ進化論を
否定するわけじゃないけど、彼が書いているのは頭の良い人の世界。わたしが
これから書くのは普通の人とばかな人の世界」とされているが、これは日本語圏
だけでなく英語圏にも存在する分布ではなかろうかという思いがよぎる。

そこで、「ウィキノミクス」著者のドン・タプスコット氏の「デジタルネイティブが
世界を変える」から「世代」による違いという軸を持ち出してみる。

ベビーブーム世代以前(-1945):17%
ベビーブーム世代(1946-1964):23%
ジェネレーションX(1965-1976):15%
ネット世代(1977-1997):27% ←2009年現在で12-32歳
次世代(1998-現在):13%
(%は米国国勢調査による人口分布)

日本での生活経験しかない私のドメスティックな感覚からすると、若干日本の
人口分布のピークとはズレがあるような気がしてしまう。世代の特長を大きく
形作るのが親世代の考え方と同世代人口の多寡による競争の程度にあるとすると、
同年代でも日本とは若干考え方が異なるのかもしれない。当然、インドや中国、
欧州でも米国とは異なるはずであるが、国境を取り払って「英語圏」「日本語圏」
というくくりをすると、インドや中国など各国からグローバルを目指す優秀な
若者層は教育や考え方の違いをある時点で克服して「英語圏」になるのだろう。

文化形成の中心的な存在であるネット世代はどういう考え方をしているのか。
タプスコット氏によると、米国のネット世代にの代表的な行動基準は、以下の8つ。
自由、カスタム化、調査能力、誠実性、コラボレーション、エンターテイメント、
スピード、イノベーションだそうだ。これは古い世代の考え方と多少ぶつかる
ところもあろうが、全般的にはWebがもたらす明るい方向性の漠然とした
イメージにいずれも合致する。

ネガティブな特長はというと、「ネット世代の暗黒面」という章で、
自分のプライベートな情報を広範囲に公開すると同時に他人のプライバシーを
侵害しがちであるという点をついているのだが、日本にみられるような
「バカや暇人」(あるいはそれを婉曲にした)といった記述はみられない。

Web肯定・推進派のタプスコット氏がネガティブな表現を避けるのは多少割り引いて
考える必要はあるが、もし、梅田氏が絶望し、中川氏が「ウェブはバカと暇人のもの」
と言い切っている状況が日本語圏特有のものであれば、やはり由々しき事態である。

梅田氏の「残念」という言葉にはまだ見切りをつけたわけではなく、今後いっしょに
改善してゆきたいという思いがあるのでは無かろうか。はてなの取締役をやめていない
のもその意志の現れなのだろう。日本のWebを、その周辺をとりまく文化を、よりよい
ものにしてゆくために、私も自分なりに考えながら行動してみたいと思う。

さて、最後に告知。

マイクロソフトがWeb開発者・クリエイター向けに最新技術動向を紹介する
カンファレンス MIX の各国版である ReMIX を、今年も日本で開催する運びとなった。

Remix09
7月16日(木)@東京ミッドタウン(六本木)

単純な翻訳&焼き直し…で済めば提供側もラクでよいのだが、各国ごとに事情が違い、
かつ数ヶ月のタイムラグがあるのでネタの流用が効かないのが実情だ。
私もセッションを1つ担当させていただくことになっている。
Live でラクして応用編Silverlightクラウド アプリがつくれるようになる Top 10

Bingの登場でLiveブランドはどうなる?と気になる方もいらっしゃるかもしれないが、
バックを支えるテクノロジー側の観点から解説させていただきたい。

ネタ自体はすでにあらかた用意済みなのだが、誰を対象に、どのように構成するか
あらためて考え直してみたいと考えている。リクエストがあれば可能な限り応える
ようにしたいので、コメントやtwitter、メールなどでリーチして欲しい。

セッションへの参加もさることながら「有償:7,000円」の価値を見いだしやすいのは、
実は懇親会ではなかろうかと思う。アドビのMAXとはまたちょっと違うWebの世界に
携わる人々と交流するソーシャルな場への参加料と思っていただきたい。
「懇親会への参加」ではどんな金額でも稟議も通りにくいだろうが、カンファレンス
への参加によるスキル向上ということで、課長さんの承認を突破できないものだろうか。

さて一方、E3の盛り上がりをみていたら、やはりXBOX Liveネタもいれようかと迷う。
スクエニやコナミの方々がグローバル市場ですばらしいプレゼンテーションを行っている。

情報消費者の集合としての日本市場を「残念」と割り切るなら、「創り手」に
希望の光を見いだそうと思ってみたりするテスト。日本語縛りの影響を比較的
受けにくい、アニメ、ゲーム、サブカル3点セットでグローバルに打って出ようとする
動きを積極支援すべきではなかろうかと個人的に思う今日この頃である。
もうしばらく悶々としそうだ。

「デュランダルの言うデスティニープランは一見今の時代有益に思える。
だが我々は忘れてはならない。人は世界のために生きるのではない。
人が生きる場所、それが世界だということを。」
メンデル付近にて。ギルバート・デュランダルの同僚が残したメモより

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