IBMのクラウド参戦を歓迎。収斂する先はマイクロソフト提唱のソフトウェア+サービスか
ソフトウェア+サービスの説明か?とタイトルがなければニュース記事の所見で
見間違えてしまうほど、考え方はマイクロソフトのS+S(ソフトウェア+サービス)に
近いクラウド戦略"IBM Smart Business"を、現地時間25日にIBMが発表している。
蓄積された技術や物量の面で見れば、確かにIBMの本格参入は手強い相手がもう1社
増えることなるのだが、現時点において彼らの方向性を歓迎したいと考えている。
単なる名前の付け替えで、はてはプライベートクラウドなどと言い始め、世の中を
混沌とさせる"Blue Cloud"より遙かに理にかなっているように思える。
というのも、今回の発表が聞き飽きた「クラウド万歳」なテイストではなく、
より現実的な目線にたった選択の自由度向上を謳うものであるためである。
(ITmedia Newsより引用)
* IBMのクラウド上で動く標準的なSmart Businessサービス
* IBMが構築したファイアウォール内で動く、(IBMあるいは顧客が運営する)非公開のSmart Businessクラウドサービス
* ワークロード最適化システム「IBM CloudBurst」。顧客は統合済みのハードとソフトを使って、独自のクラウドを構築できる
(引用終)
IBMに完全にゆだねることも、非公開な環境を選択することもでき、それらを統合、
最適化する管理ツールでどうにかしようということらしい。一般にインテグレーション
ポイントが増えるとシステムが複雑化してしまうが、まあIBMならできるのだろう。
そもそも、IBMに運用やインテグレーションをアウトソースしている企業であれば、
すでにほぼクローズドなIBMのプチクラウド環境を利用しているのと大差ない。
情シスが実務レベルでほぼIBMと揶揄されてしまいそうな企業も少なくないだろう。
技術的に見ても、世の中仮想化と騒ぐずっと以前から、サーバー側の仮想化レイヤー
ではiSeriesやAIXで論理パーティションは活用され続けている。Cloud Burstなどの
キャッシュ技術を追加すれば、Tivoliの管理ツールや認証系の技術など、必要なものは
エンタープライズ領域を中心に実績ある既存のものでほぼ揃えられるだろう。
残念なことに、私自身は世代的にDOS/VやOS/2における一連の出来事を2次情報として
しか見聞きしていないのだが、マイクロソフトとIBMは、PCの普及期と同じく、
クラウドコンピューティングの黎明期においても、それぞれが果たすべき重要な役割を
持っていると考えている。
私が製品のビジネス戦略を考える際、非常にシンプルな下記3段階で思考実験することが多い。
1. Why buy anything?
2. Why buy microsoft?
3. Why buy now?
今はまだ、なぜクラウドコンピューティングを活用する必要があるか、どのような
恩恵を受けることができるのか、を啓蒙する第一段階の時期であり、その効果を
最大化するには、話し手が多いに越したことはない。ソフトウェア+サービスの
考え方を普及させるにあたり、IBMチャネルの営業力は大いに役立つものと思われる。
本格的に競合する第二段階はその次なのだろうが、おそらく、第一段階で成功して
いれば、他の相手から陣地を奪う必要もないほどに、パイ全体の広がり方が早い
可能性もあるため、IBMの今回の発表は我々にとっても追い風となりうるのである。
ただ、やはり注意すべきは「クラウド万能論」の信者達。
地に足ついた商品ラインナップを持ち合わせないので仕方なくクラウドだけの世界観を
提唱しているというオトナな発想の方々とは、まだ論を交えることができるのだが、
本気で「クラウドマンセー!」な人々も、シンプルなメッセージ故か、増えつつある
のが現状だ。その対応には多大な戦力を要するが、長年マーケティング>営業の体制が
続いてきたマイクロソフト1社では、パートナー企業の協力を得てもなお心許ない。
過去、特にリアルコム時代にIBMの方々とはお仕事する機会も多かったが、業界上位
数社のお客様の現場に張り付いているSEさん達はハンパなく優秀だ。お客様からの
全幅の信頼を得て、お客様目線でのIT戦略を請け負っている彼らであれば、OS/400や
Lotus/Notes運用ではIBMのクラウドサービスを使いながら、WindowsアプリをAzureで
動かし、それらを統合して仮想デスクトップ上から使えるようにするような先進的な
インテグレーションを、難なくやってのけてくれるだろうと期待している。
「悪いがいまは狙い撃てないんでねぇ。圧倒させてもらうぜ!」(ロックオン・ストラトス)