【楽天「kobo」の無償配布と既存出版業界のビックリマンチョコ化について】
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プロパガンダ的にならないように様子を見ていたのですが、少し前に楽天から特定のロイヤリティの高いユーザーに対して電子書籍リーダー端末「kobo Touch」が突然送られてくるのというニュースがあったことを記憶している方も多いのではないでしょうか。
<<不信感を生んだ「kobo」無償配布>>
Twitterなどを中心に話題になったこの件は明らかに、バズ・マーケティング(口コミによるサービス訴求)を狙ったものであろう。しかしながらSNS上で話題のほとんどは、ネガティブなものとなってしまい、逆にブランドイメージを下げてしまったように思える。
この逆効果の反響をうけて開かれた、同社三木谷社長は記者会見においても「マーケティングの一環」と答えるのみで、この件についての口は重い。
今回の件で、仕掛けられたバズ・マーケティングという手法の難しさをまざまざと見せつけられることになった訳ですが、そもそも何がいけなかっただろうか?
私見ですが、そのおおきな理由は、何の予告も無く電子端末が送られてくるという手法に問題があった、と考えます。
常識的に考えて、何故送られてきたのか?無償で端末は入手したもののそれを使うことに何らかの対価の提供が発生しないだろうか?など、とまどいや不信感がはぬぐえないでしょう。
<<そもそもマーケティングといえるのか>>
「マーケティング」という言葉は、耳障りのいいニュアンスを感じるものだけれど、今回の「kobo」配布はマーケティングといえるのであろうか?
というのも、私自身日頃から感じるのは「マーケティング」といいながら、実態は「宣伝活動」にすぎないものが非常に多い。宣伝活動は、マーケティングの一部の手法に過ぎない。
であるから三木谷社長の「マーケティング活動の一環」という説明も、事象をそのままに表現しただけに過ぎず言葉足らずといわざるを得ない。
宣伝活動はマーケティングの一部ではあるものの、マーケティングは宣伝活動をさすものではない。
今回のバズ・マーケティングはマーケティング活動とのみ説明するのであれば、稚拙である。
<<けれどチャレンジは続けて欲しい>>
ただ、電子書籍の国内のプライムを取るという同社の熱意は、並々ならぬものを感じる。
従来の老舗出版業界は、市場的にも非上場な所がほとんどである。これは、製作から流通、小売までそれなりに抑えた利権的な収益構造・システムが出来上がっているから、比較的閉鎖的、保守的なカルチャーを有しているといわざるを得ない。だからこそ、電子書籍など新しいモデルへの対応に消極的ともとれる動作がまま見受けられるのだと考える。
楽天の「kobo」にかんしては賛否あるけど、ハードウェアまで取り込んだ、Amazon型の新たしいビジネスモデルに、いち早くトライしていくカルチャーは素晴らしいと思う。
書籍というコンテンツ、内容を価値として提供するkobo。
これに比して、老舗出版業界は女性誌などに顕著な、コンテンツ・内容で購買行為を促せない状況を作り出している。すなわち、「ブランドとコラボした付録」をつけることで、付加価値を高めなければ購買行為結びつかない。
かつて、自分が子供のころに流行した「ビックリマン・チョコ」のようである。本来の商品であるチョコレートよりも「おまけ」欲しさに、皆で争って買ったものである。
どちらが、正常なスタイルなのか?その判断は、ここまでお読みいただいた皆様にお任せしようと思う。
<了>
-正林 俊介-
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