こんなダイアナクラール、はじめてだ!
毎度、音楽や映像ソフトの話ばかりじゃ、ブログの趣旨とは全然会わないのだけど、今回もブルーレイソフトの話です。スミマセン。テクノロジ業界に関しても、いっぱい、いっぱい書きたいことはあるのだけど、「もう発売日が来るから、早くレビュー書いてくれ」と知人から催促されていたソフトを紹介します。はい。やっと一つ締め切りが終わりましたから。
タイトルで判るとおり、カナダの女性ジャズシンガー、ダイアナ・クラールの新作ブルーレイです。彼女は以前、Live in Parisという素晴らしいソフトをDVDで発売しています。このソフトはカメラの数が多く、アングルも凝ったもので、録音の良さ、演奏の素晴らしさなどもあって、お気に入りの音楽DVDソフトの1枚になっていました。
そのダイアナのブルーレイ「Live in Rio」ですから、そりゃ期待しないわけにはいかないですよね。制作はイーグルビジョン。日本での発売はヤマハ・アトスですが、ブルーレイ版だけはSPE(ソニーピクチャーエンターテイメント)が販売を委託されています。イーグルビジョンは他にも多数の音楽ブルーレイを発売していますから、手慣れています。5.1チャンネルトラックはDTS-HD Master Audio、すなわちロスレス圧縮フォーマット。
はじめてヴォッサノヴァをフィーチャーしたアルバム「Quiet Night」を受けてのコンサートツアーを収録したものです。
なお、日本語字幕のある日本語版をリンクしてありますが、1000円ほど安い英語版(Live in Rio (Dol Dts) [Blu-ray] [Import]
)もあります。
まず、画質・音質について書いておきましょう。
画質は数ある音楽ソフトの中でも、残念ながら悪い方です。暗部ノイズ(おそらくCCDのゲインアップノイズでしょう)が浮いて、特に観客席にカメラが向くとかなり目立ちます。前回のエントリーで紹介したクリスボッティの映像も、決して良いものではないのですが、Live in Rioに比べればずっといい。
もっとも、解像度にはちゃんとHDらしさもあるので、その点は心配無用です。ダイアナのファンはもちろん、ジャズ好き、音の良さを楽しみたいなんて人なら、あまり問題にはなりません。だって音質がイイんです。
かなり広いホールにオーケストラと一緒に入ったコンサートなので、ホールトーンはたっぷりあると思うのですが、録音は間接音をかなり控えめに、観客側の音も大幅にカットしてあり、純粋に演奏の音を楽しむミキシングがされていました。
映像のホールは広いのに、音場はちょっと広めのジャズクラブのような雰囲気なので、やや違和感はありますが、音そのものは音像が明瞭でヌケが良く、鼻が通るような気持ちよさ。プレーヤが楽器から引き出す細やかなニュアンスが、ストレートにリスナーに伝わってくる。場の雰囲気そのものを封じ込めたクリスボッティ・イン・ボストンとは、全く方向性は違うものの、こちらも悪くありません。
演奏の方はというと、いや、こんなダイアナ、初めて見ました(聴きました)。僕は彼女の演奏が好きなのでコンサートにも行きましたし、何本かDVDも所有していますが、これほどリラックスしたダイアナは初めて。
ブラジルの空と空気が彼女を変えたのか、それともエルビス・コステロとの結婚生活が充実しているのか……。あるいはそのすべてかもしれませんが、Live in Parisで感じられた、張り詰めるような緊張感のある空気がありません。それはサポートメンバーも全く同じで、パリのライブと同じサポートメンバーなのに、全員入れ替わったようにリラックスしている。
I love Being Here With YouからLet's Fall In Loveというライブへの入りはパリの時と同じなのだけど、ずっと力が抜け、良い意味で険のない演奏を聴かせてくれます。聴衆に語りかけながら、一緒に戯れるように歌うダイアナ。これまでのストイックなまでに、完璧な演奏と音を求めていた姿とは別人(体型も年齢なりにかなり変わってきました:-)ですが、こっちの方が楽しそうで好きという人も多いでしょう。
他にも良いソフトを2~3、見つけているのですが、ひとまず眠いので今日はこのあたりで。