人口高齢化とともに進むインフラ老朽化にどう取り組むか
国が道路や河川などの社会インフラの維持管理にかける費用は、2013年には3.6兆円でしたが、2033年に1.4倍の5.5兆円に膨らむと予想されています。これはインフラの老朽化が進行するためということです。人口の高齢化問題と並行して、インフラの高齢化問題も進んでいるのです。
既に多くのIT業界関係者がこの市場に注目しています。IT業界だけではありません。ヤマト運輸などの宅配業界も、ALSOKなどの警備業界も注目しています。本流の建設業界だけでなく、こうした異業種がこの市場に注目しています。
それはなぜでしょうか。維持管理市場では人材不足が起きているからです。建設業界は公共投資の減少に合わせて就業者数が減ってきました。もとより建設業界においても、維持管理に関わる業務は敬遠されてきたこともありますから、この先も人材不足は慢性的に続くでしょう。ITや宅配、警備などの異業種が参入機会をうかがうのは、拡大する需要に供給が追いつかないと見ているからです。
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さて社会インフラ維持管理市場には、実際にはどんなことが問題になっているのでしょうか。またどんな事業者が既に参入し、どんなソリューションを展開しはじめているのでしょうか。高齢化問題とちがってこの分野の実際は、あまり知られていないような気がします。
2025年の巨大市場
インフラ老朽化が全産業のチャンスに変わる
浅野祐一、木村駿 著
日経BP社発行
本書には富士通、パナソニック、セイコーエプソン、ホンダ、積水化学工業、クラボウ、コニシ、味の素、ヤマト運輸、ALSOK、・・・といった著名企業が登場し、数多くの先行事例を知ることができます。
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また本書は社会インフラ維持管理市場における今後の大きな課題を4つ上げています。
1.データを使ったマネジメント
点検データを使ったマネジメントを取り入れ、ライフサイクルにわたって長期的なコスト抑制をめざすということ。
2.異端の血を入れるイノベーション
異業種で汎用的に使われている技術を使って機械化を推し進め、既存要員による巡回や目視の限界を打ち破ること。
3.海外展開
国内で得た維持管理のノウハウは海外でも通用する可能性が大きい。これをインフラ輸出における差別化要素とすること。
4.官民連携の拡大
PFIなどのスキームを使い、民間に運用を任せること。さらには一般市民をも巻き込み、インフラ維持を通じた地域活性化につなげること。
いずれの課題も市場を発展させる上で不可欠な課題だと感じます。
人材不足の問題を解決するには、マネジメントもイノベーションも必要です。転んでもタダで起きないという点では、海外展開も将来の視野に入れておきたいところです。それからやはり、官製市場は減らしていかないとインフラ運営に自立性が育たないということでしょうか。
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