アップル、アマゾン、グーグルの戦略からフロンティアが見えてこないか(模索中)
インターネットが登場して約20年になるがこの間に大きく成長した世界的企業といえば、アップル、アマゾン、そしてグーグル。3社はいずれも私たちの仕事や生活に深く関わっている。
私自身も携帯はiPhoneを使い、書籍の大半はアマゾンから購入し、検索はとりあえずグーグルからするようにしている。トヨタが無くても今の生活はできそうだが、この3社抜きの生活は考えられない。
参考までに2010年の各社の売上と利益は以下の通り。アップルは90年代に売却が課題になるほど業績を悪化させたが、創業者スティーブジョブズ氏の復帰とともに劇的な復活を遂げた。アマゾンとグーグルはいずれも90年代が創業で、創業当時は収益が不安視されていたが、めまぐるしい勢いで事業を拡大してきた。
売上 | 利益 | |
アップル | 5.2兆円 | 1.1兆円 |
アマゾン | 2.7兆円 | 900億円 |
グーグル | 2.3兆円 | 0.7兆円 |
アップル、アマゾン、グーグルの競争戦略
雨宮寛二 (著) 、NTT出版から
本書はそんなこの3社が成長した要因を明かしてくれている。3社それぞれの経営理念と事業戦略がケーススタディとして詳しく整理されており、1冊で知ることができるので効率が良い。また3社はドメインの違う会社なので、IT業界のこれまでのメインストリームを総括する点でも大変参考になる。
著者の言葉を要約すると3社の偉業はこんな具合になろう。
- アップルは、機能性や操作性、デザイン性に優れた製品を開発し、価格競争から一線を画した経験価値を生み出してきた。
- アマゾンは、リアルとネットを上手く補完させながら、人々の情報の流通やアクセスに革命をもたらした。
- グーグルは、インターネットを熟知し、高度な技術を駆使してスケーラブルな情報基盤を創造した。
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飛躍を恐れず言えば、この3社のドメインを再構成すれば、世界にとってこれからのフロンティア(未踏)のビジネス・ドメインも見えてくるのではないか、という期待を感じてしまう。本書への最大の関心もそこにある。簡単に見えてくるものではなさそうだが、3社のドメインを棲み分けるようなポジショニング分析をしてみると何かヒントが得られるのではないか。
ちなみに雨宮氏は最終章(第6章)の「戦略比較と今後の方向性」において、3社のポジショニング分析を試行しているが、残念ながら未来のドメインを感じるような答が見えてこなかった。ここで掛け合わせられた軸は、「プラットフォーム戦略(オープンvsクローズド)」と「サービス提供戦略(クラウドvs非クラウド)」。どうも技術視点に偏りすぎたか。代案もなく言うのは恐縮だが、やはりここは顧客視点に立ち、価値に結びついた軸の組合せを試して見るのが良いように思われる。
アップルに出来てグーグルやアマゾンにできないことは何か? グーグルに出来てアップルやアマゾンに出来ないことは何か? アマゾンに出来てアップルやグーグルに出来ないことは何か? ──該当するものはいくらでもありそうだが、軸の言葉に汎化して言うのは案外難しい。答が見えてくる保障はないが、軸の組合せから未来のIT業界の方向性へのヒントぐらいは見えてくるのではないか。
言いっ放しで恐縮だが、自分としてはしばらく模索が続きそうだ。本書は3社の情報もよく整理されている。勉強会の題材にできないかも考えてみたい。