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日本の未来について悲観的な情報ばかりが飛び交う昨今ですが、一筋の光が明滅するのを最近実感します。それは成功企業の中に、アメリカ型経営とは一線を画す日本古来の伝統経営哲学がしばしば見出されるようになったことです。数百年の風雪に耐えて今なお顧客や社会に支持される老舗企業に特有な哲学や経営姿勢が、図らずも若いベンチャー企業群に見出される――その経営の在り方を「主客一如型経営」と名づけ、今後の日本の産業界をリードし、再生に導く存在になり得るものと期待しています。本ブログではこの主客一如型経営に関し、その原動力となる「不変と革新」というキーワードから解明してゆきたいと思います。

入院したい病院ランキングのトップを競う

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前回は、ギネス認定・世界最古の温泉宿として有名な粟津温泉「法師」のお話をしました。

その中で、私は「ムダ・ムラ・ムリを楽しむ心の余裕」について指摘しました。

そして、それは何も「法師」だけに限られる話ではなく、実は、世界的な医療技術と抜群のホスピタリティで知られる大病院にも見られるということを申し上げました。

 

1. 亀田メディカルセンター;

その大病院とは、房総半島の鴨川(千葉県)にある亀田メディカルセンター・・・・亀田総合病院を中核に、亀田クリニック、亀田リハビリテーション病院などを併せ持つ総合的な医療施設です。

「鴨川シーワールド」に代表されるこの土地は、サーフィンのメッカでもある九十九里浜を臨む、南国リゾート感に満ちた風光明媚なところです。

私は、財団法人MR教育センターからいただいたお仕事で、一度伺ったことがあるのですが、「死ぬなら、この病院で!」と本気で思いました(笑)。

江戸時代の蘭学塾に源を発する"老舗"ですが、入院したい病院の全国ランキングで常にトップクラスにあるだけでなく、アメリカを初めとする国々からも、多くの医師たちが研修ないしは研究に来ている病院だけあって、その素晴らしさは圧倒的です!

語り出したら、たぶん単行本2冊分くらいになってしまうので(笑)、最も感銘を受けた一点だけに焦点を絞りご紹介したいと思います。

2. ショップの秘密!

この病院には、ショップがあります。

おそらく、日本中、どんな大病院にも「売店」はあるでしょう。

でも、ここは、その品揃えのコンセプトがまったく違うのです。

ふつうであれば、入院生活の必需品と、ごく少量の娯楽品・嗜好品が並んでいるでしょう。

もちろん、そうした必需品も置いてありますが、ここには、入院生活そのものには、必ずしも必要のないものがずらりと並んでいるのです。

それも、カラフルで豪華で珍しいものが・・・!

これらは、必ずしも「売れる」ことを目的にはしていないのだそうです。

いったい、どういうことでしょうか?

 

長く入院している患者さんたちにとっては、病院での日々=日常生活となります。

そこで、沈鬱になりがちな、その日常に、少しでもワクワク感や、トキメキを感じてもらうには、どうしたら良いかを考えた末、患者さんたちに「ウィンドーショッピング」の楽しみを満喫してもらおうと考えたのだそうです。

理事長先生が海外出張に出たときなどに、街を歩いていて、ふと目にとまった商品、それも、まず日本ではお目にかかれないような珍しい商品を買って帰る由。

ここのショップには、そうした商品がずらりと並べられていて、入院患者ではない私が見ても、新鮮な驚きに心が躍るほどです♪

商品は、随時、新しい別の商品へと置き換えられてゆくようで、患者さんたちがいらした時に、飽きない努力がされていると聞きました(このお話は広報の方からお聞きしました)。

 

3. 「魂は常に患者さんとともにあり!」;

必ずしも売れなくてもよい、売ることを第1の目的としない商品をディスプレーしたお店・・・・これなど、病院をめぐる昨今の厳しい経営環境を考えるならば、「ムダ・ムラ・ムリ」の典型でしょう。

しかし、そうした「ムダ・ムラ・ムリ」なら大いいに結構という心の余裕が、この病院には見られます。

いや、それどころか、それは、ムダでもムラでもムリでもなく、患者さんを第1に考えるならば、当然、あってしかるべきこと・・・・という発想なのだと私は感じました。

学会出席その他の公務で多忙な海外出張中であっても、街角で自然に、ショーウィンドーの中の商品に目が行き、「こんな商品をショップに置いたら、きっと患者さんは喜んでくださるだろうなあ・・・・」と思って購入する理事長。

まさに、「カラダは地球の裏側にあっても、その魂は、常に、患者さんとともに病室にあって、ともに病気と闘っている」のだと実感します!

これは、まさしく「主客一如」の体現でしょう。

一事が万事!!

この病院には、こうした「主客一如型経営」と、その実体的内容としての「不変貫徹・革新断行型経営」が満ち溢れています。

一見古色蒼然とした日本の伝統的な経営体だけではなく、世界最先端と言ってよい現代型の経営体においても、それは脈々と息づいている何よりの証拠がここにあります。

 

 

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