OpenStackの今日と未来
こんにちは。
先週末に自社プライベートイベントも終わり、ホッと一息付いています。
といいながら、今週木金はCloud Days 2017大阪がありますので、また明日からフルスロットルで突っ走ります!
阻害するのはスギ花粉でしょうか・・・
本日は今後普及が期待されるOpenStackについてお話します。もう随分前から話題になり最近ようやく商用システムの基盤として使われ始めていますが、今後メジャーになっていくかどうか予測が難しいと思っています。
OpenStackとは、オープンソースソフトウェア(OSS)のクラウド基盤/管理ソフトウェアとして、およそ世界で4万人もの規模からなるオープンソースコミュニティで開発されているソフトウエアの名称です。既に米国の大手企業であるWalmartやeBay、BMWなどでもプラットフォームとしたの採用事例が出はじめており、企業向けのクラウド基盤として大きく注目を集めはじめているのです。
■クラウド市場ではAWSに対抗する新たな動きとして世界が注目
IasSの世界ではアマゾンAWSが既に独走態勢をとっており、その後をマイクロソフトAzureやIBM Softlayerなど大手のIT企業がその後を追ってビジネスを広げようと努力する形となっていますが、OpenStackはこうした動きとは全く別に2010年に、NASA(米国航空宇宙局)と米国のホスティング事業者Rackspace Hostingの共同プロジェクトとして始まった、その名の通りのオープンソースのソフトウエアということになります。その後NASAが手を引いたことからメンバー構成は変化し、2012年9月にRackspace、HP、Red Hatなどをプラチナメンバーとして非営利団体OpenStack Foundationが発足することとなり、現在では、さらに直接的なクラウド事業から撤退したHPに代わり富士通やNTTコミュニケーションなどの本邦勢がその普及に力を入れる存在となっています。現在のOpenStackは世界中で並行して開発が進んでいることから数多くのコンポーネントで構成されており、年々そのコンポーネントの数は増加傾向にあります。しかしこのOpenStack Foundationは、数あるコンポーネントのうち、Nova、Swiht、Neutron(ネットワーキング)、Glance(イメージ管理)、Keystone(認証)、Cinder(ブロックストレージ)の6つをOpenStackの中核をなすコアコンポーネントに位置付け、特に開発リソースを厚くする体制をとっています。
特にその中でもNovaはコアコンポーネントと位置づけられています。Novaの基本的な役割は仮想マシンのインスタンスを起動することにあります。OpenStackは仮想マシン以外に物理マシンやLXC、Dockerなどのコンテナもサポートしていますが、一番基本となるのはやはり仮想マシンであるため、最重要コンポーネントとされているのです。
■国内でも広がるOpenStackユーザー
国内でもOpenStackを利用するユーザーが現れ始めています。GMOインターネットのVPSサービス「ConoHa」は、VPS(Virtual Private Server)をサービスとして提供するシステムにOpenStackを活用している事例です。ユーザーはWebのダッシュボード画面から自分の必要な仮想サーバーを起動することが可能になっています。
Yahoo! JAPANでは、様々な自社サービスを提供するサーバーを管理するためにOpenStackを使っています。IaaS環境上で動作する複数の仮想サーバーとロードバランサーを組み合わせる取り組みがすでにOpenStackの事例として公開されています。
GREEでは、各種サーバーリソースをリソースプールとして管理するためにOpenStackを使っています。同社ではOpenStackだけでなく、様々なOSSを組み合わせて使っており、そのひとつとして利用されています。
■国内の調査でもOpenStackへの期待が上昇中
IT専門調査会社であるIDCJAPANが発表した調査結果によりますと、国内企業のITインフラにおけるOpenStackの導入状況は2016年3月段階では国内企業459社からの有効回答中、サーバー仮想化実施企業の7.0%が既にOpenStackを本番環境で使用しており、クラウドに近いところに位置するICT関連の企業では40%近くが既に導入に向けて取り組んでおり、OpenStackは完全に研究フェーズから具体的な導入を計画、検討するフェーズへ移行していることが明らかになっています。これまでのOpenStackの研究的な動きから考えますとかなり進化を遂げていることが窺われ、日本でも本格的な利用が見込まれる状況になってきていることがわかります。
このIDCの調査内容で特に驚かされるのは「すでに本番環境で使っている」の回答割合が全体の7.0%となり、前回2015年7月調査時の4.5%から3.5ポイント上昇していることです。「試験的に使用し、検証している」は8.3%で、前回調査と比較して依然として変化が見られませんでしたが、今回調査では「使用する計画/検討がある」の回答割合が前回調査の5.2%から大きく上昇し17.9%になり、導入に向けて具体的な動きが明確になってきていることがわかります。また、「OpenStackを知らない」の回答割合も前回調査よりも8.5ポイント下がっており、認知度も上昇している状況です。
また本調査では、OpenStackを本番環境で使用、検証中、計画/検討している企業に対して、OpenStackに期待する効果について質問をしていますが、「クラウド基盤の運用の効率化」という回答が25.7%で最も回答が多く、「クラウド環境の構築の迅速化」が21.7%、「アプリケーション開発の迅速化」が21.1%の順になっており、市場では、OpenStackはクラウド基盤の運用効率化に加え、スピード向上に対する期待が高まっていることが改めて理解できる状況となっています。また「自社エンジニアのスキルアップ」が19.7%と続いておりICT企業ではOpenStackを通じてエンジニアのスキルが向上することへの期待も高まっている状況にあります。
■OpenStackはプライベートクラウドの進展次第の部分も
OpenStackのようなオープンソースクラウドの場合、基本的にはプライベートクラウドの利用が中心になると予想されますが、今後コスト面でパブリッククラウドとどのように戦っているかという課題も残りそうな状況です。ただしプライベートクラウドに一定の市場規模が形成されることになれば、OpenStackもさらに活躍できる場が与えられることになり、世界規模で明るい未来が期待されることになりそうです。そして市場の期待の高まりも伴い、サーバーやストレージのOpenStack対応が進んできています。例えば仮想化専用ストレージのTintriの場合、Cinder driverによるOpenStackのサポートが始まっています。Cinderボリュームにおいて、ストレージのみならずサーバーやネットワークなどのインフラ全体に渡る稼働状況を見える化することができます。