「新世代SSD」3D NANDフラッシュとは
昨年中は筆者のブログをご閲覧いただき、ありがとうございました。今年も引き続きコンテンツを充実していこうと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。今日は仕事始めですが、ブログ始めにもします。
現在、半導体メモリといえば、DRAM(Dynamic RandomAccess Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、フラッシュの3種類が主なタイプとされてきました。そして、さらにフラッシュメモリには、NOR型と NAND型が存在することになります。NOR型はかなり以前より使われてきているものですが、NAND型は2000年前後から記録メディアの保存媒体として急速に普及した商品といえます。そのNAND型の中で3次元に積層した新たなモデルが開発されて市場の注目を浴びています。これが3D NANDフラッシュと呼ばれる商品です。この新たな構造の製品が発表されてから実際の開発、販売までにはかなりの時間がかかりましたが、今まさに複数のメーカーが競争環境のなかで熾烈な戦いを進めており、商品の高度化と低価格化の真っ最中にあるといえる状況です。
■NOR型とNAND型の違いについて
フラッシュメモリの中でもNOR型と呼ばれる商品はもともとEPROMの技術を応用しながら、プログラムにより消去・書き込みが出来るよう機能を進化させたものです。ランダムアクセスを得意とし、これまでPCのマザーボードのBIOSとして、近年では組み込み機器ソフトのシステムメモリとして普及してきた商品です。
一方NAND型はハードディスクに代わる記憶媒体として開発されたものであり、ビットあたりのコストが低く大容量で消去・書き込みが高速であるところが大きな特徴となります。
しかしバイト単位の書き換え動作は得意ではないというデメリットを持っています。NAND型ではこれまで内部の酸化膜が劣化して不良ブロックが発生したことから、不良ブロックを使用しないようにする管理ロジックが組み込まれているのも一つの特徴となってきました。また、誤り訂正をするため、不良ブロックの情報とデータ保障用のパリティを保存するための冗長なデータエリアをもっているのもNOR型と大きく異なる部分といえます。
■3D NANDフラッシュメモリの登場
これまでのNANDフラッシュは、Siウエハ上にMOSを形成するプレーナ型でしたが、積層してMOSを積む巧妙な方法が、2007年東芝が発表します。それがBiCS(Bit Cost Scalable)と呼ばれる新構造のNANDフラッシュ・メモリです。そこから3D構造化が始まることになりました。その後製品の販売にこぎつけられるまでかなりの時間を要していますが、メモリセルアレイを縦方向に積層化することで、大容量化や書き込み速度の向上に有利、そして省電力化にも優れた性能を誇るものを商品化することに成功しています。
■4社陣営がしのぎを削る市場に
3D NANDフラッシュメモリは、サムスンによる一社供給が続きましたが、足元ではサムスン陣営、SKハイニックス陣営、インテル&マイクロン陣営、そして東芝&ウエスタンデジタル陣営の4社連合がしのぎを削る市場となっています。市場全体としてはサムスン陣営が依然として一歩先行しているといわれ、各社それに追いつくために製造設備を含めて大きな投資を行っている状況にあります。
ただしNAND市場は競争激化と低価格化の影響を受けており、市場規模の拡大は年間を通じて引き続き減速しているのが現状です。2015年の成長率はわずか4.1%でしたが、この成長を後押ししているのは供給側のビット成長率の上昇で、これが積極的な価格競争につながっている状況といえます。荒れ模様が続くNAND価格環境は多くのNANDソリューション、特にHDD分野を侵食しているSSDに大きな影響を与えています。3D NANDへの移行というフラッシュ・メモリの歴史上最も大きな技術的過渡期の中にあって、SSDセグメントの熾烈な価格戦争はNANDフラッシュ・メーカーの収益性を大きく圧迫する要因となっています。
しかしながら、こうした市場状況にあっても市場で生き残るためにNANDフラッシュと3D技術への投資がやむことはなく、すべてのベンダーが引き続き積極的な投資を進めており、その大部分が新しいファンドリーへの投資を積極的に行っているのがこの業界の大きな特徴といえます。
■3DNANDフラッシュメモリの需要について
3DNANDフラッシュメモリは、電源が切れてもデータを記憶するため、スマートフォンなどで動画・音楽・写真などを保存するのに使われており、現状でもスマホとタブレット端末の二つだけで市場全体の50%を占めており、今後増加することが見込まれていますが、スマホの市場は飽和状態であり、規模の拡大は原則傾向にあります。
また中長期的な市場視点でいいますと、個別のパーソナルデバイスではなく、サーバーなどのインフラサイドでもNANDフラッシュメモリの積極採用が見込まれており、10年レンジの市場見込みで考えますと足元の状況とは桁違いのビット数と量の供給を要求されることが予想されています。特に仮想化とクラウド化の波の中でインフラ側で急激な需要拡大が予想され始めている状況にあり、既に3D NAND SSDがストレージに利用されはじめるといった動きも顕在化してきています。その仮想化とクラウドに特化したストレージベンダーであるティントリは2016年6月より、オールフラッシュシリーズに3D NAND SSDを全面採用し、容量を従来モデルの4倍に拡張しています。
3D化はまさにこうした多様化する市場のニーズに対する答えのひとつで、既に市場で先行的地域にあるサムスンはTera Bit仕様を視野に入れた商品開発を目論んでいるといわれています。
またインテル陣営は10TBのSSDを発表し、最大級のハードディスクと変わらない記憶容量を備えたモデルを発表しておりTera Bit時代はもうすぐそこまでやってきている状況にあるのです。