「クビになっちゃう」でハートをつかむ
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本日(もう昨日)午後、あるところのセミナーに足を運んだ。エンタープライズのシステムをテーマにしており、一通り講演が終わるとお約束の質問タイムとなった。
大抵こういう時は皆遠慮してなかなか手を挙げないことが多いが、口火を切った人がいた。その人は「すみません、基本的なことが分からないのですけど……」と、正直にたどたどしく基礎的な質問をした。ここからすでに雰囲気が変わったような気がする。ここが気さくに質問できるようなきっかけとなったのかもしれない。
続けて手を挙げた人がいた。今度の質問に回答者は答えに窮してしまった。なぜなら、まだ発表する時期が決定していない事柄だったからのようだ。新バージョンの仕様であるとか、発表時期とか、そういった類の話である。そこで回答者は苦笑いしながらこう弁明した。
「これをいうと、ボク、会社をクビになってしまいますので……」
これで会場から笑いがこぼれた。さらに緊張がほどけたようだ。しかし、これはなんだろう。哀れみからくる同情や親近感だろうか。ただこのセリフで一気に聴衆は彼に好意を抱いたようだ。そして質問は止まることがなく、講演したテーマとは直接関係ないような、一般的な事柄にも及ぶようになってしまった。
その後どうなったかは分からない。後の予定があったため、筆者は質問タイムを最後まで見届けることはできなかったからだ。それにしても流石である。プレゼンに慣れている人は聴衆の心をつかむテクニックが違うなあと感心してしまった。
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