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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

「ブラックジャックによろしく」の二次利用、二次創作が完全フリーに

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漫画「ブラックジャックによろしく」が9月15日より二次利用自由になる。

作者・佐藤秀峰氏のTwitterによると、「アプリ化してデータを販売することも、アニメ化、映画化、テレビドラマ化を行ない商業作品として上映することも、関連グッズを制作して販売することも、同人で二次創作を行なうことも、あらゆる作品の二次利用をどなたにでも認めます」とのこと。

二次創作の許可だけにとどまらず、作品自体の二次利用まで許可するのは異例の試み。「原画データを使用して、日本国内に限らず世界各国で書籍を発行しても構いません」という。これらの作品の利用について、佐藤氏および佐藤漫画製作所は著作権を行使せず、また事前の連絡も不要、ロイヤリティや報酬も一切要求しない。

記事のタイトルにある「著作権フリー」は誤りだ。「著作権フリー」と言うと著作権が無いように聞こえるが、著作権とは作品に本来的に付随しているもので「無くす」ということはできない。記事内では著作権を行使しないという表現になっているので、記事を書いた方も理解していないわけではない。記事のタイトルとしては「著作権フリー」とした方が目を引くということか。著作権は無くなることはない、使用料を請求しないと言うのが正しい。

佐藤氏はインターネットの普及で「情報を書籍というフォーマットに閉じ込めて発信すること」がもう古い。自身の作品を二次利用可能にすることで、「その結果、どのように作品が拡散し、利用され、著者に利益をもたらすのか、もたらさないのか、その調査をしたい」と説明している。

いわゆる電子出版の形態または目的として、佐藤氏の試みは十分にありである。「ブラックジャックによろしく」というキャラクタの認知度を高め、最終的に有料コンテンツなりほかの形での収益につなげるということだ。二次創作を許諾するという例はあったが、今回は完全に二次利用を許しているところが新しい。極端なことを言えば、オリジナルの書籍から新しい書籍を作って販売してもいいということだ。佐藤氏としてはそういうところまでは想定していないのだろうが、あり得ることだ。

デジタルコンテンツになることで書籍はその幅を大きく広げることができる。それをどうやって利用してビジネスにするかが知恵比べ。単純に紙を電子フォーマットにして書店で一冊づつ販売するというのは、従来の紙媒体のビジネスに囚われた一つの方法にしか過ぎない。本来の電子ビジネスはもっと違うところにある。DRMの有無やSocialDRMということも含めて自由に考えていきたい。

二次利用可ということなので、フライングだが原画展のバナー画像を利用させていただいた。

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