フランス現代音楽の本流、中沖玲子でデュティユとラヴェルを聞く。
中沖玲子は愛知県立芸術大学を卒業後、パリ国立高等音楽院ピアノ科入学。1982年ピアノ科・室内学科共にプルミエプリ(一等賞)を得て卒業。在学中パリ国際音楽コンクール2位グランプリ。パリ市長賞。芸術協会連盟賞受賞。1984年セニガニア国際コンクール、1985年エピナール国際コンクール入賞。ヨーロッパ各地で活発な演奏活動を行い、高い評価を得ている。現代作曲家の巨匠アンリ・デュティユ氏に直接指導を受け、1987年には彼の作品「影と沈黙」「ル・ジュー・デ・コントレール」を日本で初演。1993年には「デュティユのピアノ作品全曲集」をフランス(Marcal)でCD録音。1994年には恩師デュティユの世界文化賞受賞を記念して氏のピアノ作品集全曲演奏会を東京で開いている。現在はパリ・エコールノルマル音楽院教授である。
久しぶりの日本でのリサイタルで曲目はプーランク、ラヴェル、デュティユと得意のフランス現代物が中心でほかにはシューベルトのソナタが含まれていた。アンコールは来年が記念年だということでショパンのノクターン「遺作」であった。なかでも秀逸はやはり恩師デュティユの「コラールと変奏」だ。現在日本でデュティユを弾かせたら彼女しかいないだろう。あまり生の演奏を聞くことのない曲なので今回身近に聞くことができて幸運であった。
デュティユの音楽はフランス現代音楽の本流であり、ラヴェルやドビュッシーの流れを組む正統派であり美しい。ドビュッシーのオーケストレーションも継承している。管弦楽曲も多いがピアノ曲の方がより凛々しい構成が際立っているように思う。ピアノソナタ(1947年)より第3楽章「コラールと変奏 Chorale et Variations」はデュティユの作品の中でもより完成度の高い端正なものだ。中沖の演奏も恩師譲りであろう時に激しく時に和音を探るような揺らぎをよく表現していた。
シューベルトもショパンもよかったが、今晩のピカイチはやはりデュティユだ。こういう質の高い現代音楽の演奏を聞くと心が安らぐ。感謝。