フリーミアムを支えるDRM技術 デジタル技術が商品の販売戦略に革命を起こす
米「WIRED」の編集長クリス・アンダーソンの「フリー <無料>からお金を生みだす新戦略」が発売に先立って11月13日から先着1万人に無料で公開されたことが話題になっている。専用のサイトで簡単な質問に答えるだけでサイト上で閲覧できた。残念ながらぼくがそれを知った時にはすでに公開が終わっていて見ることができなかった。フリーミアムとは「フリー」と「プレミアム」の2つを合わせた造語でフリーサービスをベースにした新しいビジネスモデルを指す。例えば、時間、機能、数、顧客属性などによって使用を制限して最終的には有料のサービスに結びつけるというモデルだ。今回この本を無料公開したのもまた、本のテーマであるこのフリーミアム戦略に基づくものだ。今回の無料公開が実際にどのように有料ビジネスに貢献したかをデータを以て示して欲しいものだ。Amazonではすでに予約が始まっていて大変好調だということだ。
昔から試供品を無料で配って有料の販売に繋げるというのは古典的な販売戦略だが、フリーミアムではデジタルによる無料コンテンツの配布がポイントだ。試供品と違ってデジタルの場合その配布コストがほとんどゼロになることから、大量に無料コンテンツをばらまいてそこから数%の有料販売に繋げることができれば成功だということだ。
デジタルビジネスにおけるフリーミアムの例としてHPでは次のような例が上げられている。
・ 低品質のMP3は無料、高品質のCDは有料(レディオヘッド)
・ ウェブコンテンツは無料、印刷したものは有料(雑誌や本)
・ コンピュータ同士の通話は無料、コンピュータと電話の通話は有料(スカイプ)
・ 画像共有サービスは無料、追加の保存容量は有料(フリッカー)
・ 基本ソフトウェアは無料、機能拡張版は有料(アップル社のクイックタイム)
・ 一部抜粋は無料、本は有料(グーグルのブックサーチを利用する出版業者)
・ バーチャル世界の探索は無料、その世界の土地は有料(セカンドライフ)
この中で、商品そのものがデジタルコンテンツの場合や商品はアナログだがフリーで配るものがデジタルの場合が考えられる。いずれにしても、デジタルコンテンツを配布する場合明らかに品質の低いものや全てではなく一部だけの場合など最終商品と明らかに違うものはそのままの形で配られる場合もあるが、それ以外の場合は何らかの制限をつけて配布する必要があり、その場合のキーとなるのがDRM技術だ。回数制限、印刷部数制限、時間制限、閲覧PC数制限などいろいろなものが考えられる。こういった制限を使いこなすことでデジタルを使ったフリーミアムが実現する。最終的に有料で販売する商品がデジタルコンテンツの場合もその利用制限をすることが重要になってくる。制限のないところに価値は存在しない。フリーにするといっても全てを無制限に配布したのではデジタルコンテンツビジネスにならない。
著者自身による解説ビデオ