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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

コンビニ弁当と本の流通

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しばらく前に某コンビニチェーンが賞味期限間際の弁当を加盟コンビニ店が値引き販売することを規制していることが問題になった。当時のコンビニ本部の主張は、加盟店同士の過当競争になるとかブランドが崩れるとかだった。結局本部が折れて曖昧な改善策を出して幕が降りたようだが、この一連の騒動を見ていて出版業界が二重写しになったのは私だけだろうか?

店に仕入れた弁当が並んでいる、後数時間で賞味期限が来るとその弁当は廃棄しなくてはならなくなる、値引きをすれば賞味期限内に売ることができるかも知れない、といった状況で店のオーナーが取るべき手段は明らかなはずだ。これには純粋に経済行為としての判断以外に、資源保護やエコロジーと言った言葉を出すまでもなく、「もったいない」行為であるというもっとも常識的な判断でもある。こういった常識の前には本部の言う過当競争とかブランドとかいう理屈はまったく説得力を持たない。弁当が破棄されることで喜ぶ者、利益を上げる者はだれもいないはずだ。単に流通を仕切っている者の間違ったエゴでしかない。こういった普通に考えれば当たり前の判断が当事者には出来ない、またはしようとしない。

コンビニ弁当と同じことが出版業界では何十年も当たり前のように行われている。書籍が書店に配本(仕入れとは言わない)され、しばらくして売れないと返本され取り次ぎまたは出版社の在庫となり、しばらくすると廃棄(裁断)処分される。この量が半端な数字ではなく、40%、50%を越えている。まさに異常事態なのだが、出版業界全体でこの巨大な無駄を繰り返している。単純に考えて、50%を廃棄してしまうならば、価格を半額にして完売した方がよほどいい。

出版以外の業界での常識は何かというと、小売店は自分のリスクで商品を仕入れ、売れ残る危険性があれば様々な形で値引きをして商品を捌く努力をする。間違っても商品を廃棄するという形で結論を出すのはよほどの時だ。結果として生産者の予期した定価の何割か下回った価格で販売されることになる。最終的にコストを上回れば利益だし、下回れば損となる。これが出版業界では、始めにつけた定価で売れなければ廃棄するというあまりにも乱暴なビジネスになっている。まさにギャンブルだ。毎年数冊のベストセラーが出てそれが万馬券になり、それ以外の90%以上はハズレ馬券となる。それで業界が成り立っているならだれも文句は無いが、ほとんどすべての出版社が経営に苦しんでいる。取り次ぎ(卸業者とは言わない)の経営も苦しくなり、末端では全国で膨大な数の書店が廃業している。

といったことを考えてしまうのも、電子書籍ビジネスを考える時、どうしても出版業界のこの構造的病いが障害になるからだ。AmazonのKindleやAppleの次期モデルが話題になっているが、アメリカでおこっていることの本質は、電子ペーパーでもなく、iTunes Storeのビジネスモデルでもなく、音楽業界や出版業界の流通システムそのものだからだ。

(つづく)

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