「シリーズ構成と文字数制限」つきで文章を書くトレーニング
ドキュメント・コンサルタントの開米です。
ときどきライターもしていまして、今回はその仕事を通じてこんなことを感じました。
「1つのテーマについて、一定の尺(文字数)の決まっているシリーズものの原稿を書くことは、文章力を上げるためのよいトレーニングになる」
ということです。文章力を上げたい方は試してみてはいかがでしょうか。
経緯を簡単に言うと、先日ある企業の広報誌向けに原稿を書く依頼を受けたのがきっかけです。分量は新書版換算で20ページほど。(ちなみに代筆の仕事なので僕の名前では出ません)
この広報誌、見開き2ページ単位の読み切り構成が基本なので、ざっとこんな制限があります。
- 紙媒体なので、文字数をほぼ指定字数に合わせなければならない
- 2ページ単位でヒトネタ完結させなければならない
- それでいて、小冊子として一冊にまとまっているので、全部まとめて一気に通しで読まれることも想定しなければならない
実際にこの制約を満たすように書いてみると、今までやってきた執筆の仕事とは違った工夫が必要でした。そしてそれは文章力を上げるためのよいトレーニングになりそうなものでした。
私は今まで、雑誌(紙、Web)連載と単行本を書く仕事はしたことがあります。これらも文章力が必要ではあるのですが、今回の広報誌のような制約はなかったんですね。
- 雑誌連載のほうは発行間隔が開くので基本的に毎回読み切り。前回とのつながりはあまり考えなくても良かった。
- 小冊子では連続して読まれることを想定する必要がある。
- つまり、2ページ単位で小ネタを完結させつつ、全体(20ページ)を通じて1つのテーマで流れがつながるように組み上げなければならない。
- 単行本よりも文字数の制約が厳しい。
で、このような制約を満たすように書こうとすると何が起きるかというと・・・・
たとえば、共通の概念については用語を統一しておかなければいけません。月刊誌の連載だと1ヶ月前の話は読者も忘れているので、前後編のように明らかな続き物ではなく話題が変わっているなら、用語の統一はあまりシビアに考えなくてもよかったですが、小冊子だと一気に読まれるのでこれが重要。
また、2ページ単位で完結させつつ全体を通して流れが繋がるように書かなければいけないので、どこにどんなネタを盛り込んで「全体の流れ」を作りつつ「各パートを完結させる」のか、というのがパズルゲームのようになります。
新書版で2ページ単位というのも結構な制約で、約1400字に合わせなければいけない(長くても短くてもダメ)ので文字数の調整もなかなかシビア。(これがWeb媒体や単行本だと文字数の融通が利くんですが・・・)
こういった制約があると、
- 書くべきネタを洗い出して、どういう順番ではめ込めばつながるかを考えるので、一段階抽象化したレベルで構成を考える練習になる
- 文字数を合わせるために、削れるところを探す・簡潔な表現方法を考える、ということを延々とやるので、多様な文章表現を考えざるを得なくなる。
というわけです。ライターを本職にしてきた人ならこのへんは常識なのかもしれませんが、私にとってはちょっとした新鮮な発見でした。
そんなわけで、「シリーズ構成と文字数制限」のある原稿を書くのは、ライティング力を向上させるよいトレーニングになる! と感じた次第です。
まあ、これを誰もがやるべきとは思いませんが、文章力を上げたい場合はやってみる価値があると思います。