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人事・組織領域を専門とする、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティング担当です。人事・組織・マネジメント関連情報をお伝えします。人事やマネジメントの方々にとって、未来の組織を作り出す一助になれば大変うれしいです。

なぜ多くのリーダーシップ研修は最終的に失敗するのか

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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
リーダーシップ系の研修というのは、人事系のサービスを提供する会社ではたいてい1つは備えてあるコンテンツです。当社にもありますが、これだけリーダーシップ研修が乱立し、かつその数が減らないということは、翻って考えると、ほとんどのリーダーシップ研修が十分に機能していない、とも考えられます。

そのような状況は米国でも同じ様子で、Harvard Business Reviewで『なぜ多くのリーダーシップ研修は最終的に失敗するのか』というタイトルの記事が出ていました。内容を抜粋しながらご紹介します。

Why So Many Leadership Programs Ultimately Fail


リーダーシップとは知識ではなく行動


まずは問題提起の文章ですが、冒頭で一緒に結論も述べられています。

why weren't they leading?

The answer is deceptively simple: There is a massive difference between what we know about leadership and what we do as leaders.

なぜ彼らはリーダーシップを発揮していないのか?

答えは難しそうに見えて実は意外と単純だ。リーダーシップについて我々が知っていることと、リーダーとして我々が行うことの間には、極めて大きな差があるのだ。

著者はリーダーシップの知識が不足しているが故に失敗したリーダーは見たことが無い、とのこと。

What makes leadership hard isn't the theoretical, it's the practical. It's not about knowing what to say or do. It's about whether you're willing to experience the discomfort, risk, and uncertainty of saying or doing it.

リーダーシップを難しくしているものは法則によるものではなく、実践に関するものだ。何を言ったり行ったりすればいいかを知ることではない。自分が言ったり行ったりすることはしばしば不快だったりリスクがあったり、はたまた不透明だったりするのだが、そのような経験を喜んで受け入れるかどうかなのだ。

つまり、

In other words, the critical challenge of leadership is, mostly, the challenge of emotional courage.

別の言葉で言うと、リーダーシップに関する究極の困難さは、勇敢さに対する挑戦なのである。

著者は勇敢さを "emotional courage" (感情的な勇気) と表現していますが、これは具体的には何なのでしょうか。

Emotional courage means standing apart from others without separating yourself from them. It means speaking up when others are silent. And remaining steadfast, grounded, and measured in the face of uncertainty. It means responding productively to political opposition ? maybe even bad-faith backstabbing ? without getting sidetracked, distracted, or losing your focus. And staying in the discomfort of a colleague's anger without shutting off or becoming defensive.

勇敢さとは、他者と切り離されることなく孤高でいることを意味する。他者が黙っているときには率直に意見を言う。そして確固とした考えを持ち、不確実な状況に直面しても堂々としている。勇敢でいることとは、政治的な反対―とりわけ悪意ある裏切り―に遭遇した時にも、はぐらかされたり取りみだしたり、集中力を失ったりすることなく、生産的に受け答えが出来ることをも意味する。そして相手を遮断したり守りに入ることなく、同僚の怒りによる不快感にも平然としていられる。

EQにも似ていますが、勇気と動じない心を併せもつ、というところでしょうか。


なぜ研修が役立たないか


したがって、
you can't learn them from reading a book, taking a personality test, or sitting safely in a classroom.

これらのことは、本を読んだり、適性検査を受けたり、教室で静かに座っていることでは学べない。

ことは明白です。著者も以前からリーダーシップ研修をやっていたそうですが、

The goal of any leadership development program is to change behavior. After a successful program, participants should show up differently, saying and doing things in new ways that produce better results.

By that measure, most of what I've done ? and what I've seen others do ? has failed.

リーダーシップ開発プログラムの目的は行動を変えること。プログラムが成功した暁には、参加者はこれまでとは全く違った姿で立ち現れ、よりよい結果を生み出すような発言や行動をするようになる。

その基準でいえば、自分のやったほとんどのプログラム―そして自分が見てきた他のプログラムを含め―は失敗だった。

しばしば研修中には狙った行動が取れるようになる参加者も多いのですが、実際に重要なのは、研修の"後"にリーダーシップを発揮した行動が取れるかどうか、なのです。

If the challenge of leadership is emotional courage, then emotional courage is what we need to teach. You can't just learn about communication, you have to do it, in the heat of the moment, when the pressure is on, and your emotions are high.

もしリーダーシップにおける課題が勇敢さであるならば、勇敢さこそを教える必要がある。コミュニケーションをただ学ぶことは出来ない。コミュニケーションは実践されなければならないし、それは場の熱が高まっている時であるべきだし、プレッシャーが非常に高い状況であるべきだし、自身の感情レベルも高い状態であるべきなのだ。


リーダーシップ開発のための2つの要諦


著者はこれまでの経験から、リーダーシップ開発をきちんと機能させるためには、以下の2つの点を押さえておくことが必要、との結論に至ったそうです。


1. Integrate leadership development into the work itself. / リーダーシップ開発と業務自体を統合する

端的に言ってしまうとOJT、ということになってしまうのかもしれませんが、日常の業務において、学習と業務(実践)とをシームレスにすることが必要、とのこと。
そしてその中で重要なのは、リーダー自らが場をファシリテートしたり、自ら動きを主導したりしないこと。

I taught them ways to do that. But they had to do it, in real time, with real colleagues, doing real work.

私はやり方は教えた。しかし彼らは実際にそれを行動に移さなければならない。まさにその時に。本当の同僚に対して。実際の業務をしていく中で。

特に新入社員研修などで、「魚をあげてはいけない。魚の釣り方を教えなければならない」といったスローガンのもと、具体的なやり方を直接研修の参加者に伝えないことがありますが、これはあくまで熟練していない従業員のためのもの。すでに熟練しているリーダーおよびリーダーシップ候補者に対しては、知識としてのやり方は十分に教えてもOK。あとはそれを日々の業務で実践出来るよう、勇敢さを発揮させていくことが必要なんですね。


2. Teach leadership in a way that requires emotional courage. / 勇敢さを必要とする環境でリーダーシップを教え込む

上記の1.とも関連しますが、通常の研修は特に何事も起こらない平和(safe)な環境で行われます。が、著者が言うには、それは完全に間違いだ、とのこと。

The only way to teach courage is to require it of people. To offer them opportunities to draw from the courage they already have. To give them opportunities to step into real situations they find uncomfortable and truly take the time to connect with the sensations that come with that.

勇気を教える唯一の方法は、人々がそれを自ら奮い立たせる必要性を生み出すことしかない。彼らがもともと持っている勇気を引き出すような機会を提供するのだ。不愉快さを覚えるような現実の状況に入り込む機会を提供し、そこから生まれてくる感情の高まりと一体化するようきちんと時間をかけていくことが求められる。

著者があげる例としては、研修の一環として現場における受講者のリーダーシップの発揮度合いを聞く際に、事前にアンケートやヒアリングで情報を取っておく、ということがあるのですが、これは過去の情報なので無益なのだそう。あくまでその場その場のリーダーシップ的行動に対して、その場で部下などから本音でのフィードバックを返してもらうといった、より現実世界に近づけた研修を期間を区切るなどした上で実施する方が、より実効性が高いものになる、とのことです。


最後に著者は、リーダーシップ、あるいは勇敢さは筋肉(mustle)みたいなものであり、このエクササイズこそが力あるリーダーを育てる方法だ、と説いています。
いかに勇敢さを発揮するか。これが鍵だとすると、権限の大きさの違いなどはあるものの、どの階層・職種であっても、リーダーシップを自己開発することも出来そうですね。ぜひ勇敢さを発揮して、従業員の勇敢さのポテンシャルを開花させるような取り組みが広がっていけばと思います。

お読みいただきありがとうございます!



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