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円の適正レートは1ドル92円40銭?最低賃金から円の適正水準を考える

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8月19日午前、ニューヨーク外国為替市場で、円は戦後最高値となる1ドル75円94銭を記録しました。円がこれほど高くなる原因には所説あると思いますが、このレートに違和感を感じている人はたくさんいると思います。

*Moo*ney Box
*Moo*ney Box / The Man in Blue

先日、誠に掲載された「今、日本人の平均年収はめちゃめちゃ増えている」という記事では「今、円の価値はとても上がっているので、日本人の平均年収をドル建てで考えてみると、1996年以降で最も高くなっている計算になる」という事が示されています。

現在の円をとりまく状況を理解するためには、今まではあまり考えてみなかった視点から世の中を考えていく必要があるのかも知れません。

適正な円の価格とは?

では、実際のところ円の価値とはどのくらいが適正なのでしょうか。これにもほんとにたくさんの説がありますが、有名なビックマック指数で考えた場合の適正レートは79.14円なのだそうです。(少し前の情報ですが、現在でも大きくは変わらないはず)


でも、日本と海外のマックってかなり異なる所があって、海外ではドリンクのサイズがめちゃめちゃでかかったり、一度ドリンクを頼むとフリーでおかわりできたり、ポテトもとんでもない量が出てきたりします。

つまりは食のコストについての考え方が日米間で大きく異なるわけで、その2つの国を比較する際に、ビックマックが安いから円が強いと判断するのは、かなりかたよった考え方のように思えます。

「購買力平価」で見る方法はビックマック指数より納得できますが、分かりにくいのも確か。僕のようなものにはいまいちピンとこないので、ここでは新たに日本とアメリカの最低賃金を比較して、適正な円のレートを考えてみる、というのをやってみようと思います。

ちなみに、収入の平均でなく最低賃金を利用するのは、超格差社会であるアメリカと格差が比較的少ない日本とでは、収入の平均でみると公平な比較にならない気がするからです。本当に生活に必要な金額を示す最低賃金の方が、さまざまな違いのある2つの国を比較する場合に適しているように思います。


最低賃金の比較

最低賃金を比較するために、2005年からの各年における日本とアメリカの最低賃金と、円/ドルレートを表にしてみました。作成にあたっては、大野研究室のサイトを参考にさせていただきました。作成した表はこちら。

yen.gif
*数値の詳細な算出方法は、文末に記載しました。

この表を見てみると、2008年までは円安にも関わらず日本の賃金がアメリカよりも大幅に高くなっています。これは2009年までアメリカの最低賃金が5.15ドルに抑えられていたためです(実際には州ごとに実施時期は異なる)。

アメリカの最低賃金は、共和党と民主党の間で長い間綱引きが行われていましたが、2007年初頭に引き上げの法案が通り、2009年までに7.25ドルに引き上げられる事が決まりました。

「超競争社会」という前提をもってしても、5.15ドルは受け入れられなくなってきたという事でしょう。われわれの感覚からしても5.15ドルは少ないように思いますから、日本との比較では改定後の基準を採用すべきだと思います。(多くの場合、連邦最低賃金よりも各州の最低賃金は上乗せされるので、単純平均して7.9ドルとして計算しています。)

2009年の引き上げ直後を見てみると、日本よりもアメリカの方が少し賃金が上回ります。

しかし、翌年の2010年、1ドル86円の水準では日本がアメリカを逆転します。

2011年になるとその差はさらに広がり、直近の1ドル76円で考えると、これはもう20%以上の差をつけて日本の圧勝となります。

アメリカと日本では(生活スタイルに違いはあっても)生活レベルには大きな違いは無いように思えますので、現在の円相場で最低賃金がここまで異なるということは、やはり円のレートが異常なのではないかと思います。

適正なレートは?

2010年時点での日本の最低賃金730円をドル建てにした時に、アメリカの最低賃金7.9ドルとちょうど釣り合う円の価格を計算してみると「1ドル92円40銭」となります。

アメリカと日本の生活レベルが全く同じと考えると、円相場は1ドル90円前後が妥当だと言えるのかも知れません。

これが正しいとすると、現在の相場は水準を大きく上回るもので、その差分の大部分は輸出産業が吸収しているわけですから、この相場が続くとかなり厳しいと思います。

僕が携わっているITの世界も、輸出産業のお客様が多いですから、他人事ではないんですよね。早く円相場が「適正な」水準になって欲しいと思います。


以上、適正な円のレートを日米の最低賃金から見た視点で考えてみました。

あくまでも素人考えですので、数値、論理の怪しい所はたくさんあるかもしれませんが、ちょっとした思いつきという事で、流していただけると嬉しいです。

ではー。


* 為替レートは誠の記事「今、日本人の平均年収はめちゃめちゃ増えている」を参考にしています。"為替レートは各年四半期末の終値の平均で計算している(2011年は3月末と6月末の平均)"とのこと。
** アメリカの最低賃金は、上記の「大野研究室」サイトに記載されている州毎の賃金を僕が単純平均したもの。日本の最低賃金は厚生労働省発表の全国加重平均。アメリカの方は加重平均になっていないので正確な比較ではありません。あくまでも参考としてご覧ください。ちなみに加重平均は何によって「重み付け」されているかというと、都道府県毎の「労働者数」のようです。
*** 2005年から2008年のアメリカの最低賃金を5.15ドルとしていますが、改定後の賃金と同じ算出方法とするならば、連邦最低賃金ではなく、各州の平均にしなければなりません。でも大変なのでやめました...。

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