IT投資こそ成長のエンジン
今回の日経コンピューターの特集は、「IT投資こそ成長のエンジン」でした。興味深く記事ですので、ご興味がりましたら、是非ご一読頂ければと思います。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/NCD/pc/
207社のITの投資を分析した特集で、例えばビックデータへの投資で、新たな事業を構築して売上を実現した、とある調剤薬局チェーンの事例が紹介されていたり、あるいはブライダル産業での、顧客との情報交換のためのポータルを作製した事例なども紹介されておりました。
「IT投資に消極的な企業は、業績が低迷する」と力強くこの特集では紹介されています。
しかし考えてみると、国内の人口は減少する一方であり、患者の数や結婚式の数は有限です。ある企業がIT投資で成功すると、他の企業も恐らく追従してIT投資を行い競合をしていきますが、その市場のパイは有限なため、後から参入した企業は、同様の売上の増加を得る可能性が低くなります。さらに全ての企業が同様のシステムを導入してしまうと、全く売上への貢献がなくなります。その結果は企業はITへ投資しただけ経営が苦しくなるという矛盾を生じてしまいまうわけです。つまりは、有限な市場に対してのIT投資は多くの場合長期的なリターンが少ないと言えるのではないでしょうか。
IT投資は道路やダムといったインフラと同様に、作ってからも運用やサポートに長期的なコストが発生するものです。従ってIT投資を考える場合には、ライフサイクルを長期的に設計する事が重要です。「いつまで使うのか?」「何年でペイ出来るのか?」これらを事前にきっちり考える事が重要になります。IT資本への過剰投資は企業を弱体化させる危険があります。
IT投資は、企業の戦略ともっと密接であるべきです。特集の中では、「戦略的に重視し、積極的にIT投資をしている業務およびアプリケーション」をユーザーにヒアリングしていますが、圧倒的に「財務、会計、受注、販売、生産」といった基幹系業務が60%を占めていました。
しかし既存のシステムへの再投資は、一般的に大きな効果を実現しないのも事実です。業務自体のプロセスの変革を実施しなければ、ITにだけ投資しても部分最適が進み「ピタゴラ装置」が高速化するだけです。
IT投資に最も力をいれるべきは、成長分野です。市場のパイが小さく、これから伸びていく分野こそがもっともIT投資価値が高い分野ですし、企業が注力すべき分野です。つまりはIT投資と企業戦略は密接でなければならないという事です。そのためには特集で述べられているように、「CIOが経営とITの翻訳家になる」事がとても重要だと思います。