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ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

シニアな携帯

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購入してから2年以上が経過してバッテリーの日持ちが悪くなったとかで、妻がそろそろ携帯電話を買い換えようかと電器店を物色していた時のことである。店頭にあったカタログをパラパラとめくっていたら店員(20代男性)が寄ってきて、どんな機種をお探しですか一緒に適切なのを探して差し上げましょう、と来たそうだ。電話とメールとごくたまにインターネットにアクセスする程度なので、機能を絞ったもので構わないから安い機種が良いと答えたところ、シニア携帯はいかがですかと勧められたのである。シニア携帯ですかと思わず言い返したら、はいこれからは「大人携帯」に名前が代わりますとの見事にピントのずれた答えが返ってきたそうな。「シニア」という名の付いた機種を最初に勧められて思わずその場で店員をシバキ倒したいと感じた妻は(ちなみに関東出身です)、絶対にその店員からは買ってやらないと息巻いている。

実際の年齢を考えればシニアに近づきつつあることを自覚はしているものの、他人からしかも20代そこそこの店員から言われたくない。営業は正直であるだけが能ではない、例えばどんな年配の人であれ女性に対しては常に「お嬢さん」と呼びかける、某芸能人の爪の垢でも煎じて飲むべきとのことだ。確かにシニアと言われてその表現を抵抗無く受け入れるようになるのは、シニアのカテゴリに加わってから相当の年月が経過してからになるのではないだろうか。もしかしたら一生抵抗を感じる人もいるかもしれない。そして女心を理解しない件の店員は、絶対に女性にもてるわけがない、とまで妻の勢いはエスカレートしたのである。

しかしもし本当にシニア携帯が最適だと感じたのなら、店員はどうするのがよかったのだろう。妻と話し合った結論は、価格の安い普通の機種をいくつか候補に並べ、いかにもついでという風を装いながら、どうしてもと言うのであれば名前はお客様にそぐわないけれどもシニア携帯というのもあります、程度にしておくべきなのだ。そうすればついでにちょっと見るだけ見てみようかという気になるかもしれないのに、ということのようだ。ただ電話がかかってきた時に押すべきボタンのランプが点滅する様を見て、人を馬鹿にするなよ、という気になったそうだが。

それにしてもと思うのだけれど、言葉って寿命があるのだなと感じるのである。マイノリティーというかそういったグループを表現するために、最初は一見「おしゃれ」な単語があてがわれ、マイナーなイメージは一時的に払拭される。最近はカタカナ言葉が採用されることが多いようである。いつしかその単語が広く使われて手垢にまみれてくるようになると、イメージが低下してゆき否定的な印象が強まり、いつしか差別用語のカテゴリに入ってしまうのであろう。「シニア」は言葉のライフサイクルの中にあって、「シルバー」の後を追いかけているところなのかも知れない。そしてこのサイクルは年を追うごとに短命化しているのだろう。忙しいことだ。

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