つらくてどうってことない冬が来る
すっかり秋めいたというか、朝夕は大分冷え込むようになってきた今日この頃、皆さんいかがお過ごしですか?冷えたとは言っても東京近辺の最低気温は10度以上あり、真冬に比べるとまだまだ暖かいと言うべきだろう。かつて済んでいたアメリカのミネソタ州ロチェスターにいた頃は、初雪が10月1日だったことを思い出す。最も寒い時期だと最高気温が0度以下、なんて事もざらにある。ちなみにアメリカだから0度は摂氏ではなく華氏なのだ。だから、最高気温が摂氏に直すと氷点下18度という日もあることを意味している。だから真冬になると、外出時の帽子、耳当て、手袋とマフラーは必須である。外気に触れるのは目と鼻だけにしないと生存不可能な気分がした。
これだけ寒いと空気も乾燥している。ロチェスターに降る雪はさらさらのパウダー・スノーなので、風が吹くと埃が流されるように雪が飛ばされてゆく。こんな雪がスキー場に降ったら、スキーヤーやスノーボーダーにとっては天国だろうが、あまりに寒いと近郊のスキー場(とは言ってもただの丘みたいなところらしいが)は閉鎖なのだそうだ。確かに寒すぎて警報が出されるような日は、各種公共施設も閉鎖されるので、そんな時に外で遊ぶなんて自殺行為に等しい。
生活上最も不便だったのは車の発進だろう。外に一晩置いておくと、必ずと言って良い程窓にびっしりと厚い霜がへばりつく。ガレージに入れておくのが理想なのだが、スペースが無いので仕方ない。朝はこの霜を落とさないと車の発進ができないので、出勤前は早目にスクレイパー(要するにヘラなのだが)を手に家を出て、車の暖房をフル回転させながらガリガリと窓を引っ掻くことになる。このヘラと窓ガラスとの角度は、実は購入した車かレンタカーかで微妙に違っていたりする。自分で購入した車の場合にはガラスをなるべく傷つけないよう最新の注意を払うのであるが、レンタカーだとその意識が少々薄れるので、ヘラの角度が45度近くになったり、腕に入る力も生半可なものではなくなったりするのが人情だ。ある時同僚がロチェスターに出張した際に、レンタカー相手にヘラで朝の霜掻きをやっていたら、ものの見事にサイドミラーを砕いてしまったことがある。このときは素直にレンタカー会社に出頭したら何のお咎めもなく済んだそうだが。
こんな気候ではさぞかし生活に苦労しそうなものだが、意外と家の中は快適であった。現在の我が家みたいに部屋毎ではなく全館暖房なので、居間は暖かいがトイレは寒い、などということがない。ただ手入れをしないと肌が乾燥するのにはまいった。年のせいだという説もあるが、とにかくあちこちがむず痒くなる。仕方ないので加湿器を動かしていたのであるが、これが雑な作りで夜はかなりうるさい。ジェット機に乗っている夢を見たことがあるほどだ。でも、結局は全てを解決するのは慣れであって、この程度の逆境は簡単に乗り越えられるようだ。そして今は、ちょっとでも寒くなると暖房がないと生きていけないかのように思ったりするのも慣れの問題だろう。人間はどんな環境であれ、ある程度の順応とある程度のつらい思いを必ず持ち合わせるようにできているのかもしれない。