オルタナティブ・ブログ > 山田智恵のビジネスアナトミー >

ビジネスや世の中の流れの分析。ときどき手帳の話など。

JWLIボストン・リーダーシップ研修 | DAY15 一石五鳥戦略

»

 

01_2 
*エリス・メモリアルから歩いて5分。ボストンの中心のCopley

今週から1週間、エリス・メモリアルというNPOのCEOであるレオさんにマネジメントを教わります。エリス・メモリアルは乳幼児教育、13歳までのアフタースクール、高齢者向けケア、家庭に問題がある子供の支援という4つのサービスを提供しています。レオさんは27年前からエリス・メモリアルに勤めていて、当時は年間予算が75万ドルだったのを、今は3倍以上の350万ドルまで成長させた方。資金調達を成功させているだけでなく、人材の確保や維持が難しい組織のマネジメントも両立されています。子供に対する教育プログラムが評判で、入園を1.5年も待つウェイティングリストがあるくらいだそう。

資金調達に長けているという事前情報があったので、少しギラギラしたところもあるのかかと思っていましたが、ただひたすら地域と子供のために何かをしたいと心から思っている温かい方でした。

素晴らしい経営者として学んだことをまとめてみました。

■イメージを湧くように話す。pictualize!

エリス・メモリアルの建物がある地域は公園がなく、遠くの公園まで子供たちを連れていっていたそうです。ある時、何も使われていない土地を見つけ、市長とかけあって自分に公園を作らせてマネジメントさせてくれと掛け合ったそうです。市長に掛け合う前にも近所の人たちを説得したそうですが、どんな公園になるのか詳細に語ったそう。「ここに滑り台があって、ここにベンチがあって、ここに木があって、そこに人がどのように集まって・・・」と、目の前に公園が出来上がっているかのように話すのだそうです。頭の中で完成しているから、頭の中のものがそのまま実現するのだと言っていました。

資金提供企業のスタッフにプレゼンをしている動画も見せてもらいました。話のメインは一人の生徒の話でした。17歳で子供を産み、シェルターを転々としていた親子の様子を詳細に話していました。

レオさんも、話を聞いた後に頭の中でイメージを持ってもらうように意識して話していると言っていました。”pictualize"という言葉を使っていました。

■一石二鳥どころか、一石五鳥

日本にいるときはNPOと聞くと、資金提供者からお金をもらって弱者のために使う、という一方通行なイメージをもっていましたが、レオさんの場合は一つのイベントで関係者全員がいくつものメリットも生み出すよう設計しています。

一つの例としては、エリス・メモリアルのボードメンバーが所属する企業にボランティア・イベントに対する寄付を提案するような場合があります。ボランティア・イベントとは、例えばバレンタインの日に子供たちと一緒にテディベアを作るようなイベント。企業が寄付をし、社員がボランティアとしてエリス・メモリアルに来て子供たちとテディベアを作ります。

企業としては、1、地域貢献ができる、2、地域貢献していることを世間にPRできる、3、社員が楽しい時間を過ごすことができる、といったメリットがあります。レオさんはイベント時に写真をたくさんとって企業に渡すことで、PR活動をサポートしたり、社員が楽しい時間を過ごせるようなイベント内容の作成に力を入れます。

エリス・メモリアル側のメリットとしては、1、企業から寄付をもらう、2、参加した社員が将来大きな寄付提供者になる可能性があります。さらに、このイベントをボードメンバーが所属する企業に参加してもらうことで、通常は現場には顔を出さないボードメンバーにもエリス・メモリアルに対する主体性をもってもらうのだそう。

この一つのアクションで、出来るだけ多くのメリットを設計する考え方は、レオさんの下のディレクタークラスにも浸透していました。関係者全員に多くのメリットがあるので、「ただお金を出しておしまい」という関係にならないのです。

■マネジメントスタイルは、なんでも”YES!”

レオさんの下で働いている各サービスの責任者2人と話をする機会がありました。2人とも、「レオは基本的になんでもYES!と言ってくれる」と話していました。スタッフを信頼し、意思決定する権限を広くすることで、スタッフから様々なアイデアを引き出しているのでしょう。

今週は1週間毎日レオさんと会う機会があるので、もっと色々聞いてみます。

 

Comment(0)