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「人たらしの流儀」?

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スパイ映画は、何歳になってもワクワクしますよね。
私も、ジェームスボンドも、スパイキッズも、Mr&Mrsスミスも大好きです。
そんなスパイ気分を日常で味合わせてくれる。そんな本がこちら。
 
「人たらしの流儀」 佐藤優さん著
なんとなく、本屋さんで手にとって買ってみました。それにしても、アヤシさ漂うタイトル。
 
中身は、諜報員がどうやって情報収集するかという話がメインになり、「人たらし」は情報収集する目的のための一手段という位置づけです。
 
とても具体的な話が多く書かれていて、「ランチとインテリジェンス」という章ではランチのコースの選び方や支払いの済ませ方まで書いてあります。ジェームスボンドのような支払い方ですよ。ホホゥ、と思わずうなります。
 
本は記者と対談形式で進むのですが、最も印象的だったのが、記者の質問に対し必ずキャッチーで難しい言葉で一言返すこと。
 
「発話主体の誠実性ということになるんです。」
 
「ドイツ語だとはっきりする。Lohn(ローン)とHonorar(ホノラール)。」
 
「これは、アナロジーとメタファーの違いです。」
 
「耐エントロピー構造を作る。」
 
などなど。聞いた事ない言葉のオンパレードです。
必ず難しい単語を使って、記者は聞き返すという流れが続きます。氏は聞き返された上で、とても大衆的な(時には下品な)分かりやすい説明をする。このやり取りが繰り返されるのです。このやり方をひも解いてみると、、
 
1、みんなが知らない言葉をあえて使う。
民衆の生活を知らずに「パンがないならケーキを食べればいいじゃない?」とマリー・アントワネットとは違って、氏は民衆が分からないというのを知りつつ、あえて難しい言葉を使います。
 
2、絶対に聞き返してくるラインを分かっている
なんとなく知ってないといけなさそうな言葉だと、人って分かったフリをしてしまうものですが、佐藤氏の場合はほとんどの人が知らないであろう言葉なので、聞き返すのに躊躇しません。あまりに分からなすぎて、「ああ、なるほど。たしかに、耐エントロピー構造ですね」なんて話を続けられません。人が聞き返すのに躊躇しないラインを分かっているのです。
 
2がないと、ただ難しい言葉を知っているという事を披露する場で終わってしまいますが、そこで終わらせないで話を面白く盛り上げるところまで昇華しているのです。これ、こういうテクニックなんだなって分かっても、「え?それって何?」と毎回気になってしまいます。
 
あと、すごいと思ったのは、氏がとことん楽しんでいるのが伝わってくるところ。こうしたら相手はこう来るだろう、とよむことをものすごく楽しんでいるのではないかと思います。「たらし」とか「転がし」という言葉は、人を軽んじているようで好きじゃないのですが、仕事をトコトン楽しむ姿勢は気持ちがよく、こちらまでワクワクしますね。
 
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