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シャネルのすきっ歯から考える国のアイデンティティ

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シャネルの口紅の広告は、すきっ歯のモデルを使っている率が非常に高い。

 
 
私がアメリカに住んでいた頃(89年~91年)、アメリカ人が日本に関して持っていた印象は、フジヤマ・ゲイシャ・ニンジャ、七三分けして黒ぶち眼鏡のサラリーマン、お寿司は生の魚を食べる気持ち悪い食べ物といったところでした。
 
小学生だった私は「生の魚を食べるのか?」とからかわれながら聞かれることも度々ありました。日本の魚はフレッシュで安全だから、アメリカの魚とは違うんだといちいち説明をしながらも、恥ずかしいからこれ以上話を広げないで!と心の中で祈っていました。
 
今では、すしブームが世界中で起こり、アメリカ人の友達は「今年のクリスマスには、家族ですしを食べた」と自慢げに話してきます。海外から来た留学生が私よりドラゴンボールやおしんに詳しい。世界が自分達の文化を知っていて自信を持っていられる事が、なんて楽で、色んな面で助かることか!と驚きます。
そういう土壌を作ってきたのは、海外展開している日本食レストランだったり、コムデギャルソンだったり、Nintendoだったり、宮崎駿映画だったり、村上隆だったりするわけです。それぞれのメディアにのせて、日本の文化を伝えてきた。その恩恵を受けているわけです。
 
ただ、その一方で、先進国はどんどん同じような生活スタイルになっています。H&Mの服を着て、イケアのソファに座って、エビアンのミネラルウォーターを飲みながら、ソニーかサムスンのテレビで、アメリカのドラマを見る。
生活スタイルがどの国も同じになってくると、その国の「らしさ」はどこに表れてくるのか。私は、何に対して魅力を感じるのか、どういったものにグッとくるのかということに集約されてくるのではないかと思います。
 
それが冒頭に書いたシャネルの広告ですきっ歯を使う背景なのではないかと考えます。完璧に矯正されたハリウッドビューティに対するアンチテーゼであると同時に、私たちはこういう不完全な危うさに魅力を感じるんだというメッセージなのではないかと。そこにフランスのアイデンティティを表現しているのではないかと思うのです。
 
各国のグローバル化が進み、生活スタイルが変わらないようになってくると、自分たちが何に魅力を感じているのかを世界に対して表現していくことが自国のアイデンティティを保つために重要になってくるのではないでしょうか。
 
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