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ソーシャルメディアにおける「ビン詰め」とは?

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全国で同じブランドが流通している今と違って、昔はお醤油もお酒もお酢などは、その土地のブランドしか手に入りませんでした。当時は、それぞれの店主自らが、樽に入ったお醤油やお酢を量り売りしていたのです。

時代が変わり、セルフ方式でいろんな商品を扱う形態の「スーパーマーケット」が出現しました。ちなみに、今と同じセルフサービスのスーパーマーケット業態を初めて導入したのは、1953年に神宮前駅でオープンした紀伊国屋だそうです。

この流通の変化に対応できた企業が大きく躍進するのです。

お醤油でいえば1930年から瓶詰め作業を開始していたキッコーマン、お酢でいえば1954年に工場を全自動ビン詰めラインに刷新したミツカンです。

流通が変わったことで、安全、美味しいという基準だけでなく、全国のセルフサービス形式のスーパーマーケットで売れる形態、すなわち「ビン詰め」にいち早く成功した企業がシェア1位を築くほど成長することになるのです。

いま、これと似たようなことが起きている業界があります。それは、新聞業界です。

新聞紙の発行部数は1997年をピークに下がっていますが、新聞のウェブサイトのPV数は上がっています。産経新聞の場合は、今年になってアプリのDL数が新聞の発行部数を超えました。このことから見えるのは、紙という形では読まなくなってはいるのですが、新聞記事自体は読んでいるのです。

では、どのような形で読んでいるのでしょうか?

自ら新聞のトップ画面にアクセスし、自分で記事を探している人もいるでしょう。

ただ、それよりも多いのは、ソーシャルメディア上の友人やインフルエンサーがセレクトした記事を、タイトルを見て興味あると判断したものだけクリックして、その記事が掲載されている新聞サイトへ飛ぶという流れではないでしょうか?

そして、記事単体で面白い(もしくは重要など)かどうか判断し、面白いと思えばツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアにアップし、それに対してリツイートやシェアという形で拡散していく。ツイッターを使いこなしている方の中には、「ツイッター上の何人かをフォローしておけば、世の中の重要なニュースはほぼ網羅できる」と思われている方も多いかと思います。

スーパーマーケットの出現によって、お醤油やお酢が「ビン詰め」という生き残るための新しい条件が加わったように、新聞業界もソーシャルメディアの出現によって「ソーシャルメディアで拡散されやすい形態」にすることが生き残るための重要な条件になってくるのかと考えます。

 

 

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