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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマートフォンの夏モデル発表に思う、スマート機器の勝負は「繋がり革命によるサービスとスマート機器群」の連合

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<序論>

 2012年5月の中旬、NTTドコモ(16日)とKDDI(15日)のスマートフォンの夏モデルが華やかに発表され、その模様がUstreamで中継されました。その中で目立ったのはマルチデバイス対応とサービス重視でした。特にKDDIの田中社長は同社の提唱するパスポートの第二弾と言う事でサービスの説明から入り、その後スマートフォン新製品の説明を展開しました。そして同社のビデオパスと言う動画サービスをスマートフォン、タブレット、パソコン、スマートテレビに拡大すると宣言しました。

これは明らかに「サービス支配論理」であり、アップルの戦略に沿ったものと考えられます。

 

また2012年の春はデジタルカメラがいよいよ本格的にWiFi接続を取り入れています。デジタルカメラは日本勢が圧倒的に強い分野ですが、米国では韓国サムスンがミラーレスで参戦し、日本勢を蹴散らして一定のシェアを取るだろうと予想されています。その理由は、サムスンのアプローチはWiFi接続による写真のパーソナルクラウドサービスやフェースブックへの登録に加えてタブレット、スマートテレビ、パソコンなどとの接続連携などが可能である点です。やはり「サービス支配論理」における一日の長がサムスンの優位性の論拠となっています。

 サムスンの2012年版のミラーレスカメラ

Samsungcamera

<出所:テッククランチ>
 

★★「スマホ単独ではユーザーは満足しない時代に」、サービスに回帰したKDDI夏モデル発表会

★★Samsung Bets Big On Mirrorless Digital Cameras While Reducing Focus On Point-And-Shoot Models

★★Why Samsung Is The Next Apple

<もの支配論理からサービス支配論理へ>

 2012年に入り、スマートフォンやタブレット、スマートテレビにおける日本勢の敗戦が伝えられ、その結果、家電メーカーはシャープ、ソニー、パナソニックの大赤字は言うに及ばず、東芝、日立もテレビの赤字と言う状況に陥っています。

一方工場の機器などインフラ産業においては三菱電機や日立に代表されるように日本勢は勝利しています。

判り易く申し上げれば「もの作り」では日本メーカーは必ずしも負けていません。しかし「最先端のスマート機器作り」で負けていると言うことです。

その理由は「ICTもの作り」の象徴であるスマート機器は須らく「インターネットのサービス」が勝負であり、個々の機器の仕様を重視する「アナログもの作り」とは本質が異なると言う点の理解が日本メーカーに不足している点でしょう。極端に言えばアマゾンのキンドルファイアーのように少々仕様がサムスンに劣っていても機器の上に木のように生えたサービスが豊かに繁茂していれば、生活者はアマゾンのプライベートブランド=キンドルファイアーの方を買うと言うのが実態です。

 

昔、ゼロ戦は個としては最強のプロ向きの戦闘機でした。一方グラマンはパイロットの養成時間の短縮を考えて、素人でも乗れる戦闘機を目指しました。このパイロットの養成重視をサービスに置き換えれば、事の本質は明白です。この点で最も成功したのが米国のアップルです。

 

<スマート機器群と言う連合艦隊対単独のヤマトやゼロ戦の戦い>

また次に注目すべきは、アップルのiCloudiTunesストアに見られるように戦いはサービスによって束に括られ、それぞれの機器がWiFi接続とアプリによってスムースに繋がるスマート機器群=連合艦隊による戦いであると言う点の理解です。

そうなればスマートフォンにしてもテレビにしても、デジタルカメラにしても如何に個々の機器が優れていても、サービスに束ねられたスマート機器群にはかないません。これが米国で幻のアップルテレビが恐れられる理由であり、日本のデジタルカメラメーカーが連合艦隊方式を取るサムスンに蹴散らされると言う見方の根拠です。

 

 デジタルカメラについて申し上げれば、個々のカメラの改善レベル、完成度の高さは圧倒的に日本勢が上だと考えられます。

しかしサムスンのスマートカメラで撮った写真はサムスンのパソコンやタブレット、スマフォ、テレビにあっという間に飛んで行き、スカイドライブやドロップボックスなどであっという間にスマート機器全体で束ねられ、共有される訳です。

 

日本のメーカーは個々のスマート機器を強化し、その上になんとかサービスの木をはやそうとしていますが、スマート機器群として見た場合、世界観が統一されていません。これは明らかに大艦巨砲主義ですね。

 

この点EZWEBなどのガラパゴス携帯においてサービス経験のあるKDDIなどは流石に対応の仕方を理解しています。

 

<ヤマハのエレクトーンの凄さ>

 しかしアナログもの作りの時代にも日本には立派なサービス支配論理に基づくもの作りはありました。ヤマハは音楽機器の上にヤマハピアノ教室などの音楽教室と言うサービスを展開し、家族が色々な楽器を選ぶ中、家族の色々な楽器の群れの上に展開する音楽教室のサービスで大成功しました。エレクトーンに代表される妻恋におけるコンテストは今でも語り草になっています。

こう考えるとサムスンが出来て日本の大企業病の多くの家電メーカーに出来ないと言うのはちょっと情けない気がしますが如何でしょう?

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