日本でも実施するのかテレビアップス開発者の為のグーグルテレビ無償配布と言う焼夷弾!!?
<序論>
グーグルの公式ブログにグーグルテレビ無償配布が発表されています。2011年初に開設されるグーグルテレビ用アップストアのためにアップスを揃える必要があるからです。既にAdobe MAX conference の参加者には3000台が無償で配られたそうです。筆者は日本でも否、遅れている日本だからこそグーグルは無償配布を実施すると見ています。果たしてグーグルの狙いはどこにあるのでしょうか。
★★ Google TV is coming to 10,000 lucky developers
.
<開発者コミュニティを囲い込め!!>
スマートフォンの歴史を紐解けばその秘密が判ります。今から3年以上前の2007年1月米国のアプルはiPhoneを発表し、開発者コミュニティを立ち上げました。開発者コミュニティはマイクロアップスと呼ばれている小さな小さなアップスを多数開発し、1個100円程度で販売し、その販売額をアプルと分け合いました。そして当時トップを走っていたスマートフォンのトップ企業であるブラックベリーにあっと言う間に追いつきました。アプルの開発コミュニティが開発したアップスの数は約22万個と言われています。
アップスの開発者のプロフィールは、中には大手の企業や大手の企業から広告費をもらって開発する中堅ソフトウエア企業も存在しますが、中核はフリーランスの技術者からなる一人企業や数人の仲間企業です。さもなければ学生や技術の判る主婦と言った感じの人々、中には発展途上国の方々もいます。
テレビアップスなどこの手のマイクロ取引の実態と本質は「仮想世界のセカンドライフで衣装を開発して小金を稼いだ主婦やアルバイトする技術屋の方々」や「ソーシャルゲームの開発者」と同じと考えられます。またアップスの開発者コミュニティは音楽で言えば何処の大手レーベルにも属さないフリーランスのインディーズの方々、しかし音楽が大好きな方々、ジャーナリズムの世界で言えばアメリカで増えているフリーランスの記者やカメラマンと近いと筆者は考えています。
そう言った方々に仕事のチャンスを作り、活躍の場=エコシステムをスマートフォンの世界ではアプルのスチーブ・ゾブス氏が作りました。フリーランスを中心とした草の根の方々の支持を得てiPhoneは大成功しました。そして株価もマイクロソフトを上回り、収益も過去最高です。
<グーグルが立ち上げるテレビアップスの開発コミュニティの価値>
アンドロイドの開発者コミュニティもアプルの流れを引き継いでいます。iPhone を担ぐAT&Tとの死闘を繰り広げるべライゾンワイアレスの献身的なマーケティングにより、市場シェアを獲得したアンドロイドフォンもまた開発コミュニティに支えられています。
ニューヨークタイムの記事にもありますが、「アップスの一日の稼ぎが1ドルか2ドルと言ったらバーで仲間に笑われたよ。」とフリーランスの開発者が楽しそうに語っているように、明らかにアンドロイドも開発者コミュニティの立ち上げに成功しています。(こう言う人たちが今のアメリカのグローバリズムを支えてるんですよね。記事を読んでいると日本との落差に泣けてきます。)
お金持ちのグーグルは一種のマイクロファイナンスに近い発想でスマートフォン用のアップス開発者コミュニティに対して「グーグルテレビ」の寄付を申し込んでいる訳ですね。
筆者はこれは一定程度、成功すると考えています。非常に上手なマーケティングです。
グーグルテレビの開発者コミュニティが立ち上がれば、一挙にトップに踊り出るでしょう。ライバルの韓国サムソンは米国では7千万ドルを投入して、更に韓国でも欧州でもアップスの開発コンテストを実施中です。(尚、韓国は3月に実施済み)必死でテレビアップスの開発者コミュニティを立ち上げ、自社の技術環境に囲い込んでいます。
★★App Makers Take Interest in Android
以下ニューヨークタイムスの話の引用 (筆者はフリーランスのプログラマーの話に感激しました。)
When asked, he tossed out an estimate for his take from sales of the app, a simple program that shows train schedules: “$1 to $2 per day.”
The room erupted with laughter. “That’s pretty good money,” he protested over the clamor.
訳
ところでお前さん、そのアップスでいくら稼いでるんだい。
そうさね1日に(1-2本売れるから)一ドルから二ドルってとこさね。
わはは(そんなの稼ぎじゃねえよ・・・)
お 俺にとっては立派な稼ぎだい!!
<技術の良し悪しではなく技術者の支持が決める勝負>
これはIT技術に限ったことではありませんが、製品や技術の普及は支持する技術者の数が決めます。国際標準化機構(ISO)の押すOSIではなくインターネットのIPプロトコルがネットワークの主流となった話や構造面に優れたプログラム言語のパスカルではなく昔ながらの構造に欠けたフォートランが主流になった話など技術者コミュニティの力が技術や製品の普及の決め手となった話は枚挙に暇がありません。英語とエスペランド語の関係も同じです。
果たして殆ど白紙に近いスマートテレビのテレビアップスの開発者はアンドロイドテレビを主流に押し上げるのでしょうか? グーグルテレビの場合には無償配布の1万台が立ち上げるかもしれない核になる開発者コミュニティが鍵を握ります。上手くスマートフォンの開発者コミュニティから移行、開発者コミュニティと連動できるでしょうか。
何かファイナルファンタシーなどのゲーマーが新しく立ち上がったセカンドライフなどの仮想空間に移動する「巣移りの儀式」の時の状況が思い浮かびます。
<日本でもグーグルは無償配布を実施するだろう>
韓国のサムソンは韓国政府を動かしました。韓国の経済産業省にあたる知識経済部は、2010年9月「スマートTV産業懇談会」を開催し、2012年までに韓国内でスマートテレビを普及させると言っています。官民挙げて韓国の国というコミュニティ全体を動かし始めたわけですね。その背景には「スマートフォンの開発争いではアプルのiPhoneに負けた為、我が国の携帯電話輸出は前年比20%にまで落ち込んだ!!」「スマートテレビはグーグルとソニー連合に負けるな!!」「これは国益だ!!」と言っています。
日本に例えれば「新型ジェット機の開発競争に負けたのでゼロ戦の輸出が落ち込んだ!!」「次のジェット爆撃機では絶対負けるな!!」と言ったイメージでがんばっています。
★★ これからはスマートTVだ! 世界1位を狙う韓国(1)~「選択と集中」を推し進める政府
日本でグーグルがグーグルテレビを無償配布するといった場合、国内のアンドロイドコミュニティは直ぐに応じると思います。一方国内のテレビメーカー各社は、総務省が無償配布するとでも言わない限り追随できないと思います。そうなれば一挙にグーグルテレビは日本でも出てきますね。フリーランス型の国内の開発者コミュニティを育成し、大きく育ててくれれば日本もグローバル共和国の一員として健全に発展するのですが。
まさに2011年は「広告(皇国)の荒廃この一戦にあり!!」ですね。負けたメーカーや追随出来ない一部のテレビ局はテレビアップスの焼夷弾で焼け野原になるかも知れません。益々面白くなってきました。