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海外で注目されているブロックチェーン企業の創設者と独占インタビュー

ワリマイ創設者INTERVIEW:現状のアナログな偽造対策に革命をもたらす

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ブロックチェーン業界では、大手企業も含め、ICOという自社のコインを発行して比較的容易に資金調達ができる仕組みに魅力を感じて、特にブロックチェーンも仮想通貨も必要ないのに発行をするケースが多い。そういった企業の半分以上はもう市場からほぼ消えているという噂もあるくらいだ。

なお、実際にワリマイも十億円以上調達したわけだが、彼らはどうやってRFIDとブロックチェーンを活用した技術にたどり着いたのか?また、他の企業からどこまで理解を得られたのか?今までの道のりについて聞いてみた。

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Q:どうやって今のソリューションにたどり着いたのですか?

アレックス氏:「絶対にセキュリティを崩すことのできないシステムを思いつくまでは数々の議論がありました。実際のところ、様々なソリューションを試したのですが、はじめは何があるのかを見てみることにしたのです。まずは偽造防止業界の専門家を何人か探し当て、電話でいろいろと話を聞きました。"このソリューションについてはどうなのか?" "あれはどうなのか?" "どっちのほうが良いと思うのか?" "なぜそれは安全もしくは安全ではないのか?" など。」

「そこで気づいたのは、私たちが話している専門家たちは、まだ19世紀に生きているということでした。彼らは未だにホログラムについて話していたのです。こっちのほうがあっちのホログラムより安全だとか、防御レイヤーがあれば偽造者が同様の印刷をするのに追いつけないとか。でも、そもそもホログラムを活用すること自体、論点がズレているのです。どのホログラムであろうが、消費者には何もわからないのです。これはホンモノなのかニセモノなのかなんて、消費者はホログラムを見ても絶対にわかりっこありません。」

「そのとき私たちは "これは解決すべきだ" と考えました。業界があまりにも遅れていて、それが問題だというより、私たちが解決すべきチャンスだと思いました。それで私たちはコピーできない要素が含まれているQRコードなど、固有のIDを活用した複数のソリューションを検討し始めたのです。今何社かのベンチャーがまさにその技術を活用していますが、それを見ると自己本位ながらも嬉しいんですよね。なぜなら、私たちが3年前に持っていたアイディアを今になって他のベンチャーは試しているので、まだ私たちは先を行っているということなのです。ある意味、若干の安堵感を覚えます。他にも様々なソリューションについて議論をしていたのですが、ヤロスラブが気づいたのは、どれもアナログであるということでした。」

「たとえば、先ほどお話していたQRコードのマネできない要素というのも、砂やペンキをべたべたの紙にスプレーしたら、その模様はコピーしづらいという仕組みなのですが、それでも非常にアナログですよね。それに対してRFIDというデジタルの手法があり、全般的に世の中はアナログからデジタルへと移行しています。ビデオでもオーディオでも起きたことですが、それは私たちも同様でした。そのような経緯でRFIDにたどり着いたのですが、このソリューションについても、様々な形で精査をして、自分たちが反対側(偽造者側)にいたら、どうやって壊せるのかをあらゆる観点から検証した結果、今のソリューションなら成立するという結論に至ったのです。」

Q:今まで直面した困難や逆に成功体験について教えてください。

ヤロスラブ氏:「困難については、ベンチャーをやっていると、いつも落胆だらけです。なぜなら、予想を立てて、計画を練って、それでその通りに進むことなんて絶対にないからです。毎回転んでいるような気分でした。なぜなら、コンサルにいたときは何かを達成したときの喜びが特典としてあったのですが、ベンチャーでは、世の中が本当に残酷なのです。たとえば、まだほぼ紙だけのベンチャーだった初期段階にベンチャーキャピタルに会いに行ったのですが、だいたい言われるのが "面白いアイディアだけど複雑すぎるよ" だったのです。」

「"欧米から遠い中国という国で、誰も気にしていない問題に取り組んでいてなおかつハードウェアも必要なんだよね・・・"と。今は違うと思いますが、少なくとも当時のカリフォルニアではそうでした。そしてはじめ何よりも大変だったのは、自分の見事な計画を絶えず否定されるという逆境を乗り越えることでした。それは自分の赤ちゃんみたいなものなので、誰かにそれが不細工だと言われると、親としてはそんなこと聞きたくないわけです。でもある時点から、神経が図太くなってきて、否定されても「はいはい」と思うようになってくるのです。なお、成功が最大の復讐だと言いますが、今日に至るまでいろいろとありましたね。たとえば、一度も会ってくれなかったベンチャーキャピタルが今度は逆に会ってくれとしつこく追いかけまわしてきて、関係を修復しようとするなど。これまでの道のりは本当に勉強と成長が多かったです。」

アレックス氏:「なお、成功体験についてはいくつかあります。ソリューションのセキュリティについては、完成した際にITやセキュリティに特化した大学教授に見せに行ったのですが、そのとき "このセキュリティの壊し方は考えられない" と言われたときはとても嬉しかったです。また、ソリューションを実行に移すとき、はじめは企業にアプローチしていたのです。はじめは、"これはすばらしい技術だし、メーカーに大きな利益をもたらすぞ" と思い、B2Bに振り切って大手食品メーカーやアルコールメーカーに一社一社、会いに行ったのです。でも大体が社内政治や "ああ、それはコストが上がるからな" などといった理由で消滅していき、そこで、"もうここは方向転換して消費者にアプローチしよう" と思ったのです。そして、万が一消費者が "これはどうでもいい。興味ない" と言ったら、会社はたたもうと考えていました。でも結果はそうではなかったのです。」

「私たちは、私たちのプロテクション付きのベビーフードを同じ小売店の通常価格よりも20%高く販売し始めたのです。販売先はJDドットコムという中国で二番目に大きいECプラットフォームです。そこで消費者は、たとえば200元の商品を、まったく同じ商品に私たちのラベルが付いて240元、20%高い価格で買えるのです。すると消費者は私たちの商品を買っていたのです。JDは大きい会社で評判も良いし、商品へのマーケティングをたくさんやっているにも関わらず、消費者は私たちのプロテクションに20%追加でお金を払っていたのです。」

アレックス氏:「これがきっかけで私たちは "これは消費者にとってとても大事なことなんだ" と確信を持ちました。おそらく過去2年くらいで大きな成功体験の一つはこの反応だったと思います。消費者から良いフィードバックをもらえるようになって、"ようやく赤ちゃんのために買い物ができて、もう心配する必要ないなんて最高だわ" と言われたのは光栄でした。」

ヤロスラブ氏:「実のことを言うと、たまに私たちの在庫がなくなってしまうので逆に申し訳なく思うこともあるのです。たまに売り切れて在庫がまったくないのですが、そういうときに消費者から連絡があって "私は一体どうすればいいの?粉ミルクをどこで買っていいのかわからないわ。もう他はどこも信用できない" したがって、なおさらオペレーションを強化して更にスピードを上げていかないといけないというプレッシャーを感じています。」

まとめ:どんな技術でも最後に答えを持っているのは消費者

元アドテク領域のITベンダーとして、自分もたまに技術的な話に埋もれてしまい、最終的に消費者がそれにどう反応するのかという肝心な点を見落としてしまうことが過去にあった。B2Bの仕事をやっていると、仮に最終的なエンドユーザーが消費者だとしても、つい相手企業の目線でしか考えられなくなってしまうことがある。そうなると、結局、コスト効率やオペレーションの煩雑さなど、内部の話ばかりになる。

新しい技術がどこまで有効なのか、既存の価格帯や追加の工数を前提に見合わないと判断せずに、実際に消費者に耳を傾けることの重要性を改めて感じさせてくれるインタビューだった。

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