NTT Comが目指すクラウド寡占時代のマルチクラウド
NTT Comがマルチクラウド戦略を発表しました。
ゲームチェンジを狙え――Amazon、Microsoft、GoogleのサービスがつながるNTT Comのマルチクラウド戦略とは
NTT Comといえば、昨年10月にパブリッククラウドからの撤退を発表し、その後の動向が注目されていましたね。
このときの記事では、「クラウドサービスの統合によりEnterprise Cloudに経営資源を集中させることで、顧客のクラウドシフトをサポートするサービスを拡充する」としていました。その後半年を経て、今回の発表に至ったわけです。
国内のITベンダーは自社でデータセンターを持ってクラウドサービスを提供しているところが多いのですが、技術レベルや運用効率では「ハイパースケーラー」と呼ばれる米国勢には到底太刀打ちできないところまで差を付けられてしまっています。そこで、NTT Comはハイパースケーラーとの競合はやめ、共存を狙うという戦略、そしてその際に、データセンターという資産を活かして他社との差別化を図るというわけです。先日も書いたように、マルチクラウドに参入するベンダーは結構多いですが、NTT Comはそれに加えて回線を持っていると言うところも重要で、それを活かして「ネットワークデータセンター」を打ち出して来たところが新しいところなのでしょう。
NTT Comのクラウド戦略の変遷については、以下の記事がよくまとまっているのですが、
当初はハイパースケーラーと「渡り合っていけるように」と言っていたNTT Comが、ハイブリッドに戦略を転換し、昨年9月には今回の発表でも中心に据えられているSPDF(Smart Data Platform)を打ち出し、データを中心としたDXへの取組みを鮮明にしました。昨年9月と言えば、Cloudnの撤退を発表する直前ですから、パブリッククラウドからの移行を念頭に置いた発表だったと考えられ、その時点で今回のマルチクラウド対応も視野に入っていたと考えるべきでしょう。なにしろビジネスが大きいですから、舵を切るにも時間がかかります。
Synergy Research Groupが先月発表したAPAC(アジア太平洋地域)のパブリックックラウドのランキングがあるのですが、
Chinese Companies Control Local Public Cloud Market; AWS and Microsoft Lead in Rest of APAC
APAC全体ではAmazon、Microsoft、Googleが強く(これは世界でもきっと同じでしょう)、中国と日本だけが国産プロバイダが上位に食い込んでいます。中国は別世界という感じですが、日本ではAmazon、Microsoftについで富士通が3位に入っており、Googleを挟んで4位がNTTとなっています。このNTTの定義が書いていないのですが、NTTグループのクラウドが全部入っているのかも知れません。いずれにせよ、Cloudnが国内有数のサービスだったことは確かでしょう。
マルチクラウドの基盤となるKubernetes
これらを見ていると、10年以上前に提唱された「クラウドブローカー」がやっと本来の役割を果たせるようになったのかなと思います。AWSに続いてGoogle、Microsoftなどが相次いでクラウドに参入した2010年前後、複数のクラウドを組み合わせて付加価値を生むクラウドブローカーが登場する、と言われていました。
しかし、当時はクラウド間を連携させることのできる共通の技術基盤は無く、各クラウドのIaaSに仮想マシンを立ち上げてその上にシステムを構築し、それらを連携させるということしかできませんでした。仮想マシンを異なるクラウド間で移動させようとしてもOSやハイパーバイザーを揃えなければならず、そこにベンダーロックインが発生してしまいます。それでも、クラウドブローカーとしてサービスを提供しているベンダーは結構あるのですが、コストも時間もかかる印象です。
それが、Kubernetesという共通の基盤を得たことで、ロックインを回避できるマルチクラウドが一気に現実味を帯びてきたと言うことです。GoogleはAnthosのAWS版を正式リリースしました。Azure版もすぐに後を追うようです。
ただ、「動くはず」と「動いた」の間には大きな違いがあります。同じベンダーの違うリージョン間で連携させるのと、違うベンダー間で連携させるのは明らかに難易度は高くなるでしょう。実績が蓄積されて安心して利用できるようになるまでにはもう少し時間がかかりそうです。また、データをどこに置くか、バックアップはどうするか、といった全体の設計も考えなければなりません。ツールはクラウド側が用意するでしょうが、どのように組み合わせれば効果的か、といったところはユーザー(あるいはSIer)が考えなければなりません。このへんのベストプラクティスをどう作っていけるかが、これからの鍵を握りそうです。
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- 毎週 18:30~20:30
- 回数 全10回+特別補講
- 定員 100名
- 会場 東京・市ヶ谷、およびオンライン(ライブと録画)
- 料金 90,000- (税込み 99,000)